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2話 顔が見えない人
アラームの音で目が覚める。体が重くて気分は最悪だった。ベタつく髪を構いながら、シャワーを浴びるために一階へ降りる。いつもこの時間にはあの人は仕事に出掛けているから、会うことは無い。
シャワーを終え、キッチンで冷蔵庫を漁る。りんごヨーグルトを食べながら、壁に掛かったカレンダーを見て、今日の予定を確認する。今日は土曜日だが、部活があった。
「今日も9時から」
時計の針は7時を指している。少し課題を進めて、8時に出掛けるから10分前に、と頭の中で予定を立てていく。
部屋で制服に身を包むと、再びリビングに戻った。もう一度時計を確認してから、家を出ようとするとテーブルに何かある。
「なんか置いてたっけ…」
リビングには基本的に物がない。一人分のご飯を用意して、食べたら片付ける。それだけのため、テーブルに物が置かれている事はあまりない。
近づいていくとそれは葉書サイズのメッセージカードと花のない切り花だった。不思議に思っていると、メッセージカードに書かれた内容に目が止まった。
『
あなたの家族は人質となりました。
解放条件は以下の通りです。
この花を咲かせてください 。
』
「は?」
あの人がやりそうな事ではないが、私ではないのだからそうなのだろうと、呆れた気持ちになる。どうでもいい。だいたい、
「家族ってなによ。ただ血が繋がってるだけじゃない」
私を子どもとは思ってない人、私を置いて行った人たちを思い出してしまい、ぎゅっと目を瞑る。そして、吐いた息と一緒にそれらを頭から追い出した。
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