ミモザの春を溶かして

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 よろよろと、後退しては踵を蹴るように来た道へと引き返す。途中数人とぶつかっては心無い言葉を浴びせられたような気がするけれど、今はそんなことで心が傷つくようなことはなかった。  瞳に申し訳なくて、けれどもどうしたらいいのかわからなくて、答えをずっと、暗闇の中で探している。  わたしはなにをどこで間違えてしまったのだろう。  瞳のようになりたいと思っていた。同じことをすれば自分も同じように扱ってもらえると勘違いをして、絵の練習をしたり、やたらと走り込んで運動神経を高めようと努力した。でも、結局それは努力したという形だけで終わってしまい、身になることなんてなにひとつとしてなかった。  憧れていた。ずっと憧れていたけれど、わたしは瞳にはなれなかった。瞳が持っているものをなにも持っていなかったから。わたしが瞳になるということが、そもそもおかしな話だった。  同じような制服を着た人間が何百人といて、同じものを見ているはずなのに、わたしはその中に紛れることができない。  学校という暗い檻が昔から苦手だった。空気が淀んでいて、楽しさに飢えていて、植えつけられるように社会のなにかを教わる。果たしてこれが役に立つのかどうかは自分次第なのだろうけど、ここで学ぶ必要が果たしてあるのだろうかとずっと疑問だった。
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