155人が本棚に入れています
本棚に追加
「でもなんかへらへらしてるっていうか、意味なく笑ってるのってちょっと不気味っていうか」
教室の扉の一歩手。ずきりと軋んだ心。息を吸うことができなくなって、氷水を頭からかけられたみたいに全身が冷たい。
瞳はなにも言わなかった。いつも、どこにいても、わたしをかばってくれていた瞳の声はなにも聞こえてこない。
「わかる、なんかいつも笑ってるよね」
「面白いことなにも言ってないのに」
「瞳と話したいだけなのに、なんであの子もついてくるんだろう」
どろりとした悲しみがどっと押し寄せてくる。その場から逃げ出したいはずなのに、逃げ出すことができない。
笑っていれば、気分を害すことはないと思っていた。必要とされていないことは痛いほどわかっていたから、だからせめて笑うようにしていれば、だれかが笑って話しかけてくれるんじゃないかと思っていた。
でも、そんなのは間違いでしかなかった。
わたしは、ただただ必要とされていない人間で、笑っていることさえ不気味だと思われてしまっていた。
「そういうの、嫌だな」
なにより苦しかったのは、瞳が、それでもなお、私の味方でいてくれようとしたこと。
最初のコメントを投稿しよう!