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不登校になりかけたこともあった。でも、そうさせないようにしてくれたのが瞳だった。
『わたしには二胡しかいかないからさ。一緒にいてよ』
日差しの中で柔らかく溶けるように笑う彼女に揺さぶられてしまった。
それはわたしの方だよ、と、そう言って顔を寄せ合い笑いあったあの日があったはずなのに。だからここに踏みとどまれたはずなのに。
寄り添って過ごしていけたらと思っていた。支え合っていけたらと。
けれど、結局わたしは瞳に寄りかかって生きてしまっていたのだと気づかされてしまう。
あの日、きっとわたしは瞳に言わせてしまったんだ。一緒にいてと。そうじゃないと、自分のせいでわたしがどこかに行ってしまうと思ったんじゃないだろうか。あれは罪悪感からくるものだったんじゃないだろうか。
喉元が熱くなってなにかがせりあがってくるような気がして、それをどう吐き出したらいいかもわからず突き動かすように足だけに力を入れた。
どこに行ったらいいかもわからない。でもとっくに鐘は鳴り響いていた。しんと静まり返った廊下をあてもなく彷徨い、時折教室から聞こえてくる授業内容に耳を塞いで、求めるように流れ着いたのがあの渡り廊下だった。
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