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「はあ、惺羽くんかっこいい」
ふと、耳に届いた感嘆の息に歩くスピードを落とした。
「あ、いるねえ。なんで惺羽くんってあんな目立つんだろうね」
女子生徒ふたりが窓枠の向こうに視線を向けていた。その線をたどるように落としていけば、中庭で友人の輪の中で輝く存在を見つけてしまう。
「ひとりだけもう次元が違うよね」
「かっこよさのね」
「でもあのグループの中で惺羽くんだけ彼女いないとか信じられない」
「いや、いないんじゃなくて作らないんでしょ? このまえだって惺羽くんに告白して玉砕した子いたじゃん」
「あー二組の日奈子だっけ? 勇者だよねえ、惺羽くんってぜったい告白受けないって有名なのに」
これまで何十回と聞いてきた彼の噂は、意識していなくても自然と耳を貫いてやってくる。
先輩後輩問わず、あらゆる年代に大人気の彼は高校二年にして告白された回数は五十を超えるという。遠回しの告白を入れたら百は優に超えてしまうらしい。おそろしいぐらいに人気を博しているというのに、その告白に頷いた回数は一回もないというのだからおどろきだ。
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