4人が本棚に入れています
本棚に追加
下地は小刻みに足を運んで着地した。その横を「ほ~ら」とブランコが行き過ぎる。戻ってきて「ほ~ら」と後ろに下がった。
「あんた誰?」
下地が問うと男は前に跳ねだすブランコから飛び降りた。上手く着地出来ずに尻もちをついた。
「大丈夫か?」
下地は男を心配して声を掛けた。腕を肩に掛けたがそこに男はいない、後ろを見ると男はブランコに座っていた。下地は酒のせいでの錯覚かと考えたがワンカップ二本でそこまで酔うわけもない。
「あんた今ブランコから飛び降りて尻もちをついたよな。俺が肩に手を掛けたらすっと消えてブランコに座ってた。違うか?」
「ええ、腰を痛めたので三秒前に転生しました。それよりあなたカラスになりたいってあれはあれで大変ですよ」
どうしてカラスの話を知っているんだろうか、今このブランコの上で初めて思ったことを。そうか、悔しさのあまりに声に出てしまったのかもしれない。
「いやあなたは声を出していませんよ。あなたの思いが私に届いたんです」
男が名刺を差し出した。転生のプロ 仙人:金原武。
「少し名刺の文言を変えて黒縁にしたらそれらしくなりました、なかなかいいでしょ」
下地は金原仙人と名刺を交互に見やった。
「色々な商売あるからね、やっぱりコンサルタント的な、それも和風で神対応みたいな会社かな、あっ個人事業主か」
「まあなんでもいいんですけど、ざっくり言うと転生を助ける仕事です。あなたが死んだらカラスになりたい、それならそのようにお助けしましょう。それも無料でと言いたいとこですが、蕎麦と酒が好きでね。まあそれぐらいで好きな転生が叶う訳ですから神対応と言えばこんな神対応はありません」
「面白いなあんたは、うちで一杯やらないか、蕎麦もあると思うし」
金原仙人は蕎麦と言われて二つ返事で同行した。
最初のコメントを投稿しよう!