輪廻『虚礼』

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「静かになったけど」  下地の妻は余計に心配になった。 「問題ありませんよ」  金原仙人が笑うと落ち着いた。妻が蕎麦を用意して下がった。 「あなたが不思議な人だなと言うことはよく分かった。そういう人がいてもおかしくないと思う。俺はUFOも信じてるし霊感も信じる方だから」 「まあUFOと少し違うけど霊感はリンクするところがある。まあそんな感じで接してくれればありがたい」  下地は金原仙人の物言いが可笑しかった。他所でゴチになりながらもへりくだっていない。 「俺、死んだらカラスに生まれ変われるのかな?」  下地は酔いも回り、金原仙人の正体を探るように聞き出した。 「ええ、そりゃあなたのお好きなように転生させましょう。こうやって奥方にもゴチになった。立派なカラスを探しますよ。嘴太でも海烏でもあなたの思う通りに叶えましょう」 「嘴太は嫌だな、ごみを漁る様が憎たらしい」 「でも誰かに糞をかけたいんでしょ?」  そんな詳細まで知っている。もしかして寝言を女房が耳にして伝えているのか?そう言えば女房の奴この男を見て微笑んでいた。 「傍にいると安心出来ることがある、奥方は私がいることで気分が楽になっているだけです。純真な人ほどそれを感じるんですよ。言っときますが奥方とは初対面です」  読んでる、間違いなく俺の心を読んでいる。 「そりゃ仙人ですからね、一度通じた方のことはなんでも分かるんですよ。聞こえるとうまくないので小声で言いますが、あなたお子が二人いる。あなたが消えて家庭はどうなります、考えたことありますか?」  
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