アナザー・カレン

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暗闇にぼんやりと加湿器のライトが浮かび上がる。乳白色のそれは噴き上がる静かな蒸気に包まれて、時折プールの泡のように篭った水音を立てる。 PCの画面を見つめる。もう何十回とループした動画をとりとめもなく再生しながら、耳から外したイヤホンは無造作にテーブルから垂れている。 真夜中だった。しんとした部屋は棺桶のように無機質だ。 動画の途中で広告が入り、ぼそぼそと心地よいBGMを放出していたイヤホンからシャカシャカ小煩い雑音が聞こえてきた。カチリと左クリックで閉じる。もう眠らなければならない。明日も予定はあるのだ。 はあぁ───……、と、長くため息をつく。すると特に息が詰まっていた訳でもないのに、首の後ろや腰、背中で張っていた筋肉が解けて、大きく肺が膨らんだ気がした。静かに呼吸を三度繰り返し、どっと後ろに倒れ込む。 ずるずるとベッドに身体をのせて、スマホを充電コードに繋いだ。 就寝の体勢になったというのに───目が閉じない。ブルーライトを浴びたせいか。だが身体は疲れている。頭もぼうっとしている。 眠れない。まずい。時間的に限界だ。明日もあるのに。どうしよう。 一度、気になりだした僅かな不調は不安へと形を変え、すっかり眠気を遠ざけてしまった。いてもたってもいられないような、焦りに支配されてしまった気分をどうにか落ち着けたくて立ち上がる。うろうろと部屋を歩き回る。ああ、眠らないと。わかってるのに。 PCの電源を落とす。んんー、と唸りため息をつく。フード付きのパーカーに腕を通す。下をジャージに履き替える。千円札を二枚ほど財布から抜き取り、スマホをコードから外して玄関に向かう。 素足をスニーカーに突っ込んで、外へ出た。 通りに出ると、車も人通りもなく静かだった。 苛立ちを発散したくて外に出たはいいが、なんともいえない静謐に背筋がぞくぞくとする。一気に感情が冷めた。引き返したくなったのも束の間、足はすたすたと歩き出す。魔法にでもかかったようなちぐはぐな思考と行動に、しかし不快感は起こらず、なんとも不思議な感覚のまま体は動く。 フードを被り、右手にスマホ、左手に千円札を握りしめてポケットに入れたままずんずん進んでいく。向かうはコンビニだ。ここは郊外の住宅地、スーパーでもラーメン屋でも、どの店に行くにも七分ほど時間を要する。 本当に誰もいない。水底に沈んだ都市のように、命がない。辛うじて道を照らす街灯さえ激しい眠気に耐えるかのように明滅している。やがて交差点に着いた。赤信号。定期的に危険を知らせてはいるが辺りに身を脅かすようなものは存在しない。無視して白線を踏む。 ゆっくりと歩を進める。とん、と白線を踏むたびにそこで立ち止まる。いくら時間をかけて進んだところで轢かれる心配はないのだ。青いライトを視界の端に認めながら中央の白線を踏んだ時、異変が起こった。 信号の色が変わった。青から赤に。───途中の黄色はどこへいったの? ノイズというと、テレビの砂嵐が連想されたのはもう一昔前のことだ。セロハンのような、ネオン色の透明なフィルターが景色に幾重にも重なって揺らめく。脳が丸ごと塩漬けにされ、凝縮される感覚。その中心に意識体となった自分が引きずり込まれていく感覚。不思議なことに、スニーカーを履いた足の、地面を踏む感触はちゃんと感じられているのだ。そこで私は、これは幻覚なんだと思い立った。気づいた時には遅かった。もうこの身体は私の肉体ではなく、意識は私の意識ではなかった。 「───ビビットは嫌いか。ではセピアは?」 頬を押し付けている布の配色が変わった。視覚的には落ち着く色。しかしこの色も好みではない上に、肌触りがよくない。そう呟くと彼は金がなくてね、とニヒルな笑みを浮かべて肩を竦めた。 周囲は暗かった。閉じられた密室に私はいる。照明らしきものは一切なく、部屋の全体像も把握し切れない。天井と壁が一体化したドーム状の空間だと理解できたのは、彼がそう言ったからだった。私が自分の五感を以て取得できた情報は殆どない。ただ一つ、この妙な空間に閉じ込められてから、少なくとも五時間が経過していることだけは明白だった。取り上げられたスマホがベッド横のテーブル上で振動したからだ。アラームが起動したのだ。 思考している自分に違和感がある。間違いなく自分自身で思考し意識野に言語を反映させているのだが、そもそも私はこんな言葉遣いはしない。こんな、普段小難しい事ばかり考えている女科学者のような。まるで誰かの口調をトレースして真似ているかのようだった。 「トレースどころか。君は彼女を丸ごと取り込んだんだ。もう彼女の意識は君のそれと溶け合ってしまっている。厳密に言えば君はもう君ではない。君は全くの別人として生まれ変わったんだよ。初めまして、アナザー・カレン」 慇懃無礼に礼をする、彼はひどく整った顔立ちをしていた。目元はずっと、莫迦にしたように────事実見下されているのだろうが────その美しい顔を崩しかねないほど歪んでいるが。 彼女、カレン、同じ人物のことを指すのだろう。私はため息をつきたくなったが、それもできない。今私が自由にできるのは思考だけだ。身体の方は、指先一つ動かない。 彼は私の眼球が乾くのを防ぐために瞬きをさせた。疲れるねこれ、とぼやきながら。 「何もかもが予想外だ。我々が求めていた情報は永久に失われ、君の扱いについても上から連絡が一向に来ない。おれのような有機系インターフェースに与えられた権限は数少ない。人間の生体は入ればいじるのは簡単だが、こうして外から操作するとなると厄介だ。我々言語情報生命体は間接的な干渉に関しては不得手というか、まあ不可能に近かった。おれのような双接続型デバイスをつくりだせたのだから、その壁は突破できそうだがね」 有機系インターフェース……? 言語生命体……? 聞き慣れない単語だ。 「……こうして数時間君と対話してみたが、無駄な時間だったな。カレンが得た第四次ハラップ宇宙律座事変後の知識や情報は、一切抽出できない。彼女の最後の足掻きか」 りつざじへん? 彼は私のスマホを起動させ、教えてもいない暗証番号を打ち込んでメモアプリを立ち上げると、律座事変、と書き込んで見せた。 「君の主言語の中で最も近い表現がこれだ。事変について詳細を知る必要はない。まだお達しはないが、おそらく君の意識体はこの電子牢に誘縛された時と同様に分離され、その後肉体の破壊と同時にイドゥのバンクベルタへ収容される。自分の意志では覚醒も入眠もできず、未観測の事象を捉え考察するための一ソフトとして組み込まれることになる。情報の奪取が叶わなかったのは無念だが、彼女の思考傾向は我々の発展に大いに役立つだろう。……ほんとに疲れるな、これ。心臓の鼓動から瞬きまで制御するなんて。人間の脳というのは凄まじい。これで我々の二十分の一の寿命を生きられるとは。さぞ使い勝手がいいだろうな」 彼の言うことはかなり難解だが、それでも噛み砕いて話してくれているらしい。だが理解などしたくなかった。このままでは死ぬよりも恐ろしいことになるのだ、私は……。 彼女はどうやら混乱しているらしかった。無理もない。誘縛直前に見た彼女は、生後まだ十数年しか経っていない、いわゆる少女だった。やつらの尋問は苛烈さや残酷さとは無縁のものだが、それは私個人の主観で感じ得ることだ。おそらく彼女の棲む地球という星の文明の管理者である人間にとっては、肉体と意識は絶対に切り離せないハードとソフトという関係にあるのだろう。それを断ち切られて数時間もの間、見知らぬ生物に意識を覗かれ、肉体を操作され続ける。耐えがたいものがあるだろう。それでもよく発狂せずに応答が出来るものだ。私は追い詰められて咄嗟にスキャニングを実行し、耐久値ギリギリ判定の少女の脳に逃げ込んだ。私の得た情報、その中でも絶対に奪われてはならない機密だけを彼女の脳に打ち込み、ロックをかけた。おそらくやつらはエージェントが私だけではないことを知っている。だから私、彼女に関しては見切りをつけているだろう。私が彼女と溶け合った? ばかな。私は私、彼女は彼女だ。ちょっと彼女の脳に細工をして欺瞞を仕掛けてみたがこんなにもうまくいくとは思わなかった。 第五次ハラップ宇宙律座事変を食い止めるためにもこの状況を上手く利用して逃げなければ。彼女には悪いが、まだ利用させてもらう。私は彼女の網膜を通して、黒い装飾布を身に纏った長身の、おそらく人間の雄として好ましい姿を選んで構築したのだと思われるインターフェースの顔を凝視した。 どうしてこんなことになったのだろう。眠れず、眠るために散歩をしに行っただけなのに。帰りたいよ。私をこんな、わけのわからない状況から解放して。家に帰して。 おや、これは。私はぎょっとした。 「伝え忘れたが、君の元居た宇宙は消滅した。無い場所にどうやって帰るというんだ。多元宇宙論を知らないか。厳密に言えば君が居たのは正当な宇宙とは少し違うんだがね。予備だ、予備。多元の一つで既に滅んだ宇宙に、まだ地球が文明と共に保持されている世界線を絡ませて疑似的に成立させたに過ぎない。それでも四世紀ほど持ち堪えたようだがね。そんな使い捨ての宇宙にカレンは逃げ込んだ。我々もそこだけはノーマークだった。こうして捕獲したはいいが無駄足だ。だが彼女も哀れだ、あそこは予備だからこそ原律保護下にない。ハラップより曖昧な宇宙だよ。いつまでも隠れていられるほど余裕はなかった。せめていずれかの力ある管理生命体群が律座の主として手を挙げていれば、我々も諦めがついたものを」 やつは気づいていないのか。私はやつの言葉にむかつきながらも驚愕に打ち震えた。この少女は今、一瞬元の自我を取り戻したのだ。 そしてやつの言葉にまたはっとする。そう、私は予備宇宙に逃げ込み、それは悪手だった。ハラップで既に前例は観測していたというのに。 ふと、私の頭の中に何かが聴こえた。人の声のようだけど、違う。でも不快感はない。私の身体を操作している宇宙人らしき男は、それに気づいていないようだった。 律座の主は多元世界の〈自分〉全てを一つに集約し、完全に独立した存在として律座する宇宙の〈律〉を管理する力を得た存在だ。全ての宇宙に律座の主は存在し、逆にいなければ周囲の別宇宙の〈律〉に全方位から引っ張られてしまう。 イドゥは多元宇宙論を解明した種族、高域言語情報生命体だ。彼らはやがて自分達が存在する〈原始の宇宙〉以外の、別の宇宙に干渉する術を得た。しかしそこは〈原始の宇宙〉のそれとは異なる法則=〈律〉を有する全くの異世界だった。また観測を続けるうちに〈律〉が制御されていない宇宙の存在も明らかになり、イドゥはそんな不安定な宇宙を管理しようと乗り出したのだった。原律保護という〈律〉を補完し保全する仕組みを作り、その権利を観測しうる全ての宇宙の律座の主に分散することで多元宇宙同士のバランスを取ることにも成功した。 ハラップ宇宙は正に風前の灯火だった。ハラップ宇宙は既に原律崩壊が始まっており、このまま律座の主が決まらなければ四半世紀と待たずに消滅する状態だった。揺らぐ宇宙の民の無意識は、複数の宇宙の律座を占める力を持つ二つの主に届いた。律座の主を決めるのはその庇護下に入る者達の総意であり、ハラップの場合挙手した双方ともしかし律座の主と認められるには力不足だったため、最後の手段としてイドゥに助けを求めたのだ。しかし予想外だったのは、いわゆる〈無未エネルギー(=物質よりも可能性に近い、量子的なエネルギー。宇宙空間の大半を占める、あらゆる物質が存在しない純粋な「無空間」に満ちている静的エネルギーで、それにより「有空間」と呼ばれる平面、立体、物理法則等を必要とする空間が成立している。形なき宇宙が放散するのを防ぐための重力のような働きも有しているが、逆に無未エネルギーがない世界には「隙間」がなくありとあらゆる物質が密集してしまう。保有数値が高いほどその宇宙は拡大し広義的な生命の数も増える)〉の保有数値が、他の宇宙と比べて、ハラップの場合振り切れていたことだった(〈律〉が整わないせいで保有する膨大な無未エネルギーを収めるだけの大きさ広さがハラップ宇宙にはないということ。毒ガスが詰まって破裂寸前の風船の状態)。仮に律座の主が決まったとして、下手すればハラップ宇宙の消滅だけでは済まないほど莫大なエネルギーを有する宇宙を扱うには片手間ではまず不可能だし、かといって挙手した二つ以外に務まるモノはいなかった。となれば全体の管理を務めるイドゥにお鉢が回るのは当然だったが、やつらはそれを逆手にとってエネルギーを利用しようと企んだのだ。 当然ながらハラップ以外にも崩壊寸前の宇宙は存在する。実はイドゥが存在する〈原始の宇宙〉が同じ状況にあることが判明していた。やつらの律座の主の力が予想以上のスピードで衰えているのだという。原因はイドゥだった。多元宇宙に干渉するために律座の主の力が必要だったが、あまりに膨大な数の干渉を行ったため、律座の主の寿命にまで影響してしまい、もうそれは止められないのだという。 ハラップ律座事変。ハラップ宇宙に生きるモノたちはイドゥに自宇宙のエネルギーを奪われまいと反撃を始めた。だがイドゥも必死だ。宇宙一つ生き永らえさせるためには少なくとも十の四十四乗ほどの無未エネルギーを使うほかない(無未エネルギーは多元的言語接触により使用可能となるが、この技術は現在、高域言語情報生命体であるイドゥが独占している)。そしてそんなエネルギーを保有する宇宙はハラップの他にはない。なんとしてもハラップの律座に就きたいイドゥは干渉を超えた攻撃をハラップに仕掛け、ハラップの総意体はそれを食い止めるべく反撃する。消耗し、回復し、また互いに刃を向け合い、そうやって繰り返された大戦は既に四度目を終え、間もなく五度目が始まる。だが五度目に耐えうる力はもうハラップには残っていないし、イドゥもいよいよ原律保護下に治めた他宇宙の力を借りて暴力的にハラップの律座を奪おうとしている。複数の律座の主の力を合わせれば無意識の総意を支配することなど容易いだろう。見返りに何を差し出したのか。想像したくもない。私が持ちうる全ての悲観的表現を用いても表しきれないほどの、残酷な取引をしただろうから。 第四次律座事変の際、ハラップの民の一部はイドゥ同様、原律に干渉する能力に目覚め、既に崩壊し消滅を待つだけの小宇宙にハラップの情報や記録を複製転送して、予備宇宙として運用する実験を行った。しかし原律保護もなく律座の主もいない仮初の宇宙は暗黒に呑まれて、消えた。直前までその兆候すらなかった。 私は一つの仮説を立てた。予備宇宙。今、私と彼女の関係も似たものではないか? 私は自身の情報を彼女に複製転送し、保持に成功している。ハラップや彼女のは消滅したが、逆に言えばにはやつら、イドゥもノーマークなのだ。さっきインターフェースがそう言った。原律保護。〈律〉の保護、言うなれば干渉。イドゥは彼女───アナザー・カレン、略称A・Cとしよう───A・Cに干渉し切れていない。彼女の意識に潜む私の存在に気づいていないのがその証拠だ。やつらは人間という生物に関しては殆ど無頓着だった。最近になってその有用性に気づき有機系インターフェースとかいう接触用装置も開発したが、ほんの三年とはいえ地球で過ごした私の方が、人間の扱いに関しては上だ。今A・Cを支配し動かせるのは、私。この私だ。 やつらが奪おうとしたハラップの律座にアクセスするための言語コードを、私は何としても守り切らねばならない。第五次律座事変を回避しなければならない。律座の主も、既に候補はいる。説得は難航するだろうが切り札は幾つか用意できた。逆にこれでだめなら腹を決めるしかない。イドゥに使い潰されるくらいなら消えた方がマシだ。……いや、決してそんな最期は迎えさせない。我らの宇宙を生かすのだ。ハラップに生まれたモノとして、これは使命だ。文字通り命を懸けた。 私は彼女の意識野に侵入した。彼女は私の存在に少したじろいだが、どこか安心したように感情の波を穏やかにゆらめかせた。A・C、ごめんね。全てが終わったらあなたをハラップの民として迎えます。望むなら新しい身体もつくってあげる。だからそれまで、私に力を貸して。私達の生存に協力してほしい。 いいよ。 本当に? いいよ。何があったか、ちゃんと教えてくれたから。あなたのことはこわかったけど、今はこいつらが許せない。ハラップの神様になんて絶対にさせるもんか。……それとね、すごく眠い。もうずっと眠ってないんだ。丸一日分。実はものすごくつらいの。泣きたいくらい。 わかったわ。終わったらまずゆっくり眠らせてあげる。あと、ハラップの〈律〉にあなたを合わせないと。上手くいけばあなたの体感で二時間後にはベッドの中よ。 枕はオレンジがいいな。急ごう、カレン。 手配が難しい色ね。でも、了解。A・C。 私は欺瞞のため固定展開していたシグナルカット波を手順をすっ飛ばしてぶち破り、肉体の操作権限を取り戻して、インターフェースの身体をスキャニングした。保護膜の薄い部分を割り出し、すかさずA・Cのスマホに侵入してでき得る限り強力な電磁波を照射した。動きが止まる。血肉が飛び散り、剥き出しになったインターフェースの制御回路にスマホを突っ込む。こんな小型で高度なOSを破壊してしまうのは勿体ない気もしたが、命が最優先だ。やつが操作していたコンソールのコードも露出させて繋ぐ。電子牢の管理システムにアクセスした。スマホが完全に壊れる。視界が一気に明るくなった。ドームの内と外に張り巡らされていた量子遮断壁が機能停止したのだ。私はA・Cの感情に引きずられて視界がぼやけるのを感じ、慌てて顔を拭った。ドームの端まで一気に駆け抜け、開いた扉の向こうに現れたアンドロイド兵共を躱しながらひた走った。 イドゥは多元宇宙のバランスを取り、原律保護で守られた宇宙群全体の〈律〉───言うなれば〈世界の律〉を司るに相応しい力を、確かに持つのだろう。だが一つ一つの宇宙にはそれに相応しい律座の主が居て、その能力にも設定する〈律〉にも違いがある。それらの管理者という領分を超え、自分の宇宙を守るために他者の宇宙を侵すなどという蛮行が許されていいはずはない。ハラップの莫大なエネルギーを手にすればやつらは間違いなく自宇宙の修復だけでなく多元宇宙の統合、一元化も始めるだろうし、それはイドゥ観測下にない宇宙すら巻き込んだ大戦になり得る。ハラップを守ることで世界を守る。大それた正義だろうか。それでも私はこの戦いに安息の終止符を打ちたい。そのために今必要なのはまず、逃げ切ること。イドゥの収監惑星ジェドンからの脱出。そしてその次にやることも決まっている。 ハラップのメル銀河系、私の故郷では希少な染料で染めた、オレンジ色の枕を手に入れることだ。
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