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「本当に良いのですか?」
天宮くんが眉を下げ、それでも頬を朱色に染めながら、期待に満ちた視線を向けてくる。
「もちろんだ。君に対する詫びのつもりだからね」
天宮くんは微かに頬を緩ませると、「ありがとうございます」と言って受け取った。
泣いている時も艷やかで美しいが、頬を高揚させて口元を綻ばせている様子もなんとも優美だった。
「坂間さんは……何を買われたのですか?」
いつもより饒舌な天宮くんは、もう一冊の書物が気になるようで、包を持った僕の手元に視線が流れていく。
「見たいかい?」
僕は天宮くんの腕をそっと引き、ちゃぶ台の前に腰を下ろす。机上に乗せた包から書物を取り出すと、天宮くんの表情が瞬時に強ばる。
「そんな顔をしちゃあいけないよ。これも立派な書物であり、芸術なのだからね」
そう言って僕は頬を緩めると、紙を捲っていく。裸体を晒した男女が互いに絡み合い、情事に耽る描写が滑らかな筆使いで描かれていた。
「これなど見てご覧。まるで天宮くんの様に艷やかで、美しいではないか」
女体を縄で縛られた乙女が身を捩らせ、その様子をひたと見据える男の姿。女の艶めかしいぐらいに豊満な裸体は、縄によって更にその濃艶さを増幅させていた。
横目で天宮くんを見やると、頬を朱色に染めてしおらしく俯いてしまっていた。
何度も情事を繰り返しても、天宮くんは決して恥じらいを忘れず、いつなん時たりとも羞恥の心持ちでその黒い瞳を伏せてしまうのだ。
その様子が僕には堪らないほどに、情欲を掻き立てられ、我をも忘れてしまうことが多々あった。
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