愛交遊戯

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「いいかい、天宮くん。僕はね、どうしたって君を手放したくはないのだよ」  天宮くんと向き合うと、微かな光に照らされた美しい頬に手をやる。  微かに体を強張らせた天宮くんに「嫌かい?」と問うと、首を微かに振り「……そんな事は」とポツリと零す。 「ただ……僕は内心、驚いているのです」 「何故だい?」 「僕のことを……玩具ぐらいにしか思っていないのかと……」  天宮くんが躊躇うような声で言った。  確かに天宮くんの言う事はあながち間違いではない。だが、だからと言って、そうだと言うのがどれほどに愚かな事なのかぐらい、僕にだって分かっていた。 「そんな事ないよ。天宮くん。確かにね、最初こそは君をあの屋根裏部屋から見たとき、君との遊戯で頭がいっぱいになった。だけどこうして君と過ごすうちに、僕の心持は変わってきたのさ」  僕は天宮くん腰に腕を回し、体を近づける。ふわりと石鹸の柔らかい香りが、鼻先を掠めていく。 「僕は飽きっぽい性格でね。君を本当に玩具にしか見ていなかったのだとしたら、僕は此処まで君の心持をはかろうとなどしなかったはずだ」  頬をにやった指先を天宮くんの唇に這わせていく。柔らかくもあり、押し付けた指先を跳ね返すような弾力も兼ね備えていた。今すぐにでもその唇にしゃぶりつきたい。そんな感情を持て余していた。  だが、そうしたところで、彼の心までも僕の物には出来ないだろう。僕が一番欲しているのは、彼の僕に対する執着の念である。僕がいくら彼に心を傾けていても、彼の心がこちらにない限りは、安息は訪れないように思えていた。
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