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「確かに最初は本当に遊戯を止めてしまいたいとも思いました。でも……今日の貴方を見て僕は少しだけ考えを改めました。本当に淫婦や玩具にしか思っていないのであれば、ここまでしないでしょうし、失意の念に暮れている僕を無理にでも抱くだろうと……」
「そうだとも。君を淫婦とも玩具だとも思っていないよ」
「貴方の……本心はどう思っているのですか?」
僕はそこで一旦、口を噤む。こうして本人から自分に対する心境について聞かれてしまうと、自分の心持について考え込んでしまう。僕が天宮くんに執着している事は、紛れもない事実ではある。でもその根底には何があるのだろうか――
ふと、一つだけ思い当たる節が浮かび、途端に激しい躊躇の念が込み上げた。
「……言えないのですか? 言えないということはやはり、僕の事をそういう風に思っていたのですね」
そう言って天宮くんは、唇を噛み締めホロリと涙を零す。
「もう……耐えられません。僕はこんな事、間違っていると思っていたのです……さようなら」
そう言うなり天宮くんは僕に背を向けてしまう。
「待ちたまえ! 恥を偲んできちんと言おう」
僕は慌てて天宮くんの腕を掴む。微かな震えに如何にして、天宮くんの心持が穏やかではないかと思い知らされてしまう。
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