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桃太郎はすべてを失い…さまよっている内に相模の国の山奥にたどり着いた。
信じていた者たちに裏切られ誰とも関わり合いを持ちたくなかったため深山でひたすらに眠り続けた。
しかし決まって、鬼ヶ島で殺した同胞、自ら手をかけた仲間と育ての親が恨みがましい目で見つめてくる悪夢で目を覚ますのだ。
ある夜、桃太郎が目を覚ますと傍らに大柄な男が立っていた。
「おやおや?お目覚めですか?随分顔色が優れませんね?」
「お前は誰だ?」
「まぁ、仮に足柄山の熊…ということにしておいていただけますか。」
「熊か」
「はい」
「もしや、あなた何かお悩みをお持ちではありませんか?」
「悩み、あぁ…」
「もしもの話、ですけど」
熊と名乗った男は続ける。
「何もかもをやり直す方法があるとしたら興味はありますか?」
「何もかもをだと?」
「はい、何をかもをです。それがどんなに常軌を逸した事でも。世界の理に反することでも。それこそ何もかもです」
「ばかな、そんなことが出来るはずがない」
「ですから、もしも…のお話です」
「できるのか?」
もし、何もかをもやり直すことができるのであれば
おじいさん、おばあさんの凶行を…
仲間を失わずに、同胞を殺すこともなく全てが元通りにできるのか…?
「なにか、成し遂げたいことがあるようですね?」
「金時…というのはご存知でしょうか」
「金時?」
「はい、この世の全ての理に反する願いを叶えることが出来る者のことです。大勢と戦って最後の一人に与えられる栄誉ある称号でもあります。もし、あなたも参加する気があるのでしたら手助け出来るのですが…」
「そうか…」
「はい…」
「もし、全ての願いが叶うのなら、昔に戻って何もかもをもとに戻したい…というのも出来るのだろうか?」
「お望みのままに…です」
「そうか…」
「はい…」
「では、どうすればいい?」
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