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昔むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが暮らしておましたとさ
おじいさんは山に芝かりに、おばあさんは川に洗濯に出かけました。
おばあさんが洗濯をしておると川上から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきて家に持って帰りましたとさ。
桃の中からは玉のような男の子が生まれ、桃太郎と名付けたそうな。
桃太郎はすくすくと育ち、立派な青年になり、きびだんごをあげた犬、猿、キジを率いて鬼ヶ島に鬼退治に出かけました。
鬼ヶ島では激しい戦いの末に鬼を退治しました。
さぁ、帰ろうか…と桃太郎が船に乗ろうとしたところ。
桃太郎さん…いいえ桃太郎!その財宝を置いていきな!
声に振り向くと犬、猿、キジがすごい形相で睨みつけています。
お前たち一体どうしたんだい?
桃太郎が尋ねると
我らは対抗勢力である鬼を倒すべくやってきた獣神族。
にっくき鬼のいない今。
桃太郎…あなたは邪魔なんですよ
そんな!仲間だと信じていたのに!
仲間を演じるのも、なかなか疲れたのですよ…
桃太郎、貴様には死んでもらう!
「獣神合体!」
犬、猿、キジが光に包まれたと思うやいなや
みるみる融合していく犬の牙、猿の体躯、そしてキジの羽
見たこともない化け物に変わってしまった。
自由に空を飛び獣の爪と牙で襲いかかってくる。
俊敏さは猿のよう。
もはやこれまでか!と諦めかけたその時。
鬼の生き残りの決死の突撃により、一瞬の隙が生まれた。
そこへ桃太郎の刃が届く!
致命傷を負ったことにより融合が解けて瀕死の重傷となる犬、猿、キジ。
「やはり、あなたは強い…」
息も絶え絶えの犬、猿、キジから聞かされたのは衝撃の事実であった。
犬の話によると獣神族と鬼は長く続く対立関係にあったのだが
おじいさんから「鬼を倒す方法がある」という口ぐるまに乗せられ、桃太郎の仲間になったのだという。
そして、おばあさんの作った「超強化きびだんご」の使用により、残りの寿命と引き換えに鬼をも倒す力を手に入れたために、もはや命が尽きようとしていることも…
桃太郎の腕の中で息を引き取る犬、猿、キジ…。
真相を突き止めるべく桃太郎は故郷へ向かうのであった。
故郷に帰り着くと、おじいさん、おばあさんが出迎えてくれた。
「おじいさん、おばあさん。鬼ヶ島の鬼を倒して参りました。」
「そうかいそうかい」
「ほんとうに大した子じゃのう」
「…聞きたいことがあります。」
「犬、猿、キジを騙したというのは本当ですか?」
「おやおや、だれにそんな話を?」
「本人たちから聞きました」
「ククク…黙っておれば良いものを…」
「おじいさん、まさか本当に!?」
「ククク…ああ、本当のことよ。」
「畜生どもをけしかけて、わしらにとって、目障りだった鬼たちを葬ってやったのよ!」
「おじいさん!あなたって人は!」
「ほんにのう…残りの寿命と引き換えに鬼を倒せるほどの力を得る、猛毒のきびだんごに手を出すなど、愚かな畜生どもじゃて」
「おばあさん!あなたはなんてことを!」
「まぁ、これで邪魔者はお前だけになったわけじゃ」
「!!」
「どうじゃ?その力わしらの下でふるってみんか?“鬼を倒した英雄”よ?」
「断る!」
「そうか…」
「ほんに…愚かな子よのう」
おじいさんは妖怪ジジイに、おばあさんは妖怪ババアに姿を変えた。
そして、桃太郎の最後の戦いは始まる…
死闘の末、辛くも妖怪ジジイ、ババアを打ち倒した桃太郎。
「ククク…見事なり桃太郎。最後に一つ良い話を教えてやろう。」
「桃太郎、お前は自分の生まれに疑問を持ったことはないか?」
「なに?」
「桃から生まれたということに疑問を持ったことはないか?と聞いておる」
「それはおじいさん、あなたから聞いた話だから疑うはずもない」
「人間が桃から生まれるわけがなかろう!」
「では!私はどうやって生まれたというのですか?!」
「貴様は鬼どもの宝である妖力をもつ桃を奪いとった時に連れ去ってきた“鬼の子”よ!」
「私が鬼の子であると?!」
「その証拠に鬼どもは同胞である貴様に手出しをしなかったであろう?」
「…そんな!まさか?!」
「ククク…そのまさかじゃよ“鬼殺し”の桃太郎」
「私は…いったい…なんてことを…!」
「せいぜい同胞を殺した罪を背負って生きていくがいい!はははっ」
すでに事切れた育ての親のおじいさんの胸に刃を突き立てる桃太郎。
そして、そのまま桃太郎は姿を消してしまったという…。
『昔むかし…あるところに…桃から生まれた桃太郎が…おりましたと…さ』
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