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その時だった。
謁見の間のガラスを突き破って、巨大なゴーレムが入ってきたのである。
その姿は鉄人で、ところどころ錆びている。メイドや衛兵は逃げまどい、センリもハヅキも悲鳴を上げてたちまちに謁見の間から姿を消した。ミズキも逃げようと、した。しかし、カルマが尻もちをついて動けないでいるのを見つけて、踵を返した。
「何をしている! 早く逃げるぞ!」
「ま、待ってください……足が、足がすくんで動けなくて……」
「くっ、間に合わない!」
ゴーレムの拳が振り上げられ、2人に襲い掛かる。今までの人生を思い返しながら、ミズキは死を覚悟した。その瞬間であった。
「!?」
足元に青色の陣……輝術の空間移動術の陣が現れたのを見て、ミズキは息をのんだ。静かにソプラノの詠唱が聞こえてくる。
「空間を司りし魔女よ、我々を救いたまえ!」
ふとカルマを見ると、強い力を宿した瞳とかち合った。
「『輝術、ウィッチズレーション!』」
青色の光が2人を包む。ミズキは浮遊した感覚、水流に巻き込まれるような中で、静かに意識を失った。
「……うっ」
ミズキが意識を取り戻したのは、白い砂浜の広がる海辺であった。頬についた砂を払って起き上がると、横にはカルマが倒れていた。ミズキはカルマを起こそうとして、ふと、今まで長髪で見えなかった首元に目が行った。そして、ミズキは愕然とした。
――星形の青あざ、そう、「星空の子」の証があったからである。
ミズキはしばらく動けないでいると、うめき声を上げてカルマが目を覚ました。そしてハッとした表情で首元を隠すと、飛び跳ねるように起き上がり、決まりが悪そうに目を伏せた。
「カルマ、君はもしかして……」
カルマは意を決したように顔を上げると、「えぇ」と言って続けた。
「私は『星屑の水』を飲まないで育った、本物の、『星空の子』なんです」
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