4 選択肢に生じた迷い

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4 選択肢に生じた迷い

 選択肢Aを選び続け、田中ルートを淡々とこなした俺は、何度目かのデートの時に、いつものように選択肢が出た。 A 「田中くんて、私のどういうとこが好きなの?」 B 「隣のクラスの千葉くんがこの前ね……」 C 「今日はもっと田中くんと二人で、長い時間過ごしたいな」  ここで俺にふと迷いが生じた。  何故ならここでCを選ぶと、どエロイ展開が待っているのだ。かなり魅力的だ。  しかしうっかり誘惑に負けてCを選んだら、真宵はどうなると思う? バッドエンドルートに変更されるのだ。本屋のイケオジ店員と同様だ。  田中と深い仲になった後、真宵は何故か他の男とも関係を持ち始める。とんだビッチだがそこが良い。しかし……  嫉妬に駆られた田中は……真宵を刺しに来てゲームオーバーとなる。  刺される……というか死ぬんだろうなゲームオーバーということは。単なるスチル集めの為にならバッドエンドも厭わないが、これは乙女ゲーに転生した俺の第二の人生なのだ。そしてこれが初めてのプレイ。初めてで、最後だったらどうする。  俺の第二の人生、遭えなく終了となる。ここは誘惑には負けず、とりあえず無難にAを選択することにした。  ことあるごとに現れる選択肢は、俺にしか見えない。タッチパネルのようなものが出現して、俺はそれを選択するのだ。  ここで手が滑った。 「隣のクラスの千葉くんがこの前ね……」  B!!!!!!  AとCの間で迷った俺はうっかり、真ん中の選択肢Bを押してしまったのだ。  Bってなんだったろうか。あまり記憶にない。記憶にないということはつまり大したことがないんだろう。しかし田中ルートを完遂するにはずっとAを選択し続ける必要がある。  詰んだ。 「千葉がどうかした?」 「千葉くんが……」  要約すると、隣のクラスの千葉が生徒会へ立候補するという話だった。俺つまり真宵は書記に立候補しているが、千葉もやはり書記狙いらしい。 「へー……でも俺の票は決まってるから」 「ありがとう、田中くん」 「そうか……千葉がねえ」  やたらと千葉を気にしだした田中は、カフェの椅子から立ち上がった。  その日Aを選んでいたら、二人はいい雰囲気になってキスまで持ち込む予定だったはずだ。しかしBを選んでしまった俺は、何故だか気もそぞろな田中と 早めに別れ、何事も展開せぬままに家に帰る羽目になった。  別に田中とキスをしたかったわけではない。ただ今日選んだBが後々どう影響するのか定かでない。  すっきりしない気持ちのまま翌日登校すると、田中と千葉が昇降口でぼそぼそと話しているのが目に入った。 「田中く……」  声をかけようとして、足が止まる。  こんな展開は俺の記憶になかった。選択肢Bを軽んじて、このルートをスルーしていた可能性が高い。つまり展開がわからない。慎重に行かなければ。
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