愚者の行進

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―――AKを持って走る、走る、走る。 死と絶望が待つ未来へ向かって、真っすぐに。 十分理解している。 この戦争がもはや、”戦争とは呼べない戦争”になりつつあるということくらい。 端から勝ち目なんてなかったし、利益も薄かった。 デジタル軍拡競争やバイオテクノロジー軍拡競争が激化しているこの時代、戦争は望ましい結果をもたらす手段にはなり得ない。 理由は簡単。ありとあらゆる兵器を遠隔操作できるようになったからだ。 今の流行りは自分の代わりとなる何かと誰かを戦わせること。人間同士が自動小銃を手に泥沼の戦闘を繰り広げる時代などとうに過ぎ去ったのだ。 ”人機一体”の代理兵士(サロゲート)。 主要国の兵士たちは戦場より遥かに離れた場所からそれらを生身の身体と同じように動かし、残忍な独裁政権や機能不全の国家の頭上に鉄の雨を降らせる。 機械のような人間、人間のような機械。どっちが操作しているのか、どっちが操作されているのか、頭の悪い僕には分からない。 ただ一つだけ言えるのは、どっちも冷酷で野蛮なクソ野郎だってこと。 オトナは皆、偽善者だ。 僕たちみたいにはじめっから選択肢がない憐れな子供を教条的な罵詈雑言で屈服させ、洗脳し、捨て駒として利用する。 きっと、本当の痛みってやつを経験したことがないんだろう。だからこそ、ここまでやれるんだと思う。 奴らは平気な顔で僕らの眼前に残酷で理不尽な現実を突きつけておきながら、自分達を善人だと言い張る。 まったく冗談じゃない。大義に犠牲はつきものだって? 死ぬのだって楽じゃないんだ。
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