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入口方面の暗闇に松明を向けて照らす。
すると、先程までは有ったはずの退路が水に沈んでいた。
噴火の衝撃で遺跡のなんらかの罠が作動したのだろう。
ここまでの経路でも似たような仕掛けはあったため、判断波早かった。
マサトは遺跡の深部へと松明を掲げる。
「こっちだ!」
まだ罠もあるかも知れない道を必死で走る。
すると、天井が大きく揺れた。
「罠か!?」
ジーニーがランタンを持った手を向けると、そこには亀裂と共に巨大な爪があった。
「ドラゴンの爪……」
ドラゴンの嗅覚が遺跡内部に居る三人を捉えたのだ。
亀裂と爪の間から、赤々としたマグマが侵入してきていた。
マグマのドロッとした塊がジーニーに降り注ぐ。
咄嗟にリュックサックを盾にしてジーニーは事なきを得たものの、間一髪だった。
「急いで!」
普段は大人しいカルラが間近に現れたドラゴンとマグマに焦りをあらわに叫んでいた。
「バカ!」
大声を出したカルラの頭上に、瓦礫が降り注ぐのをいち早く動き出していたマサトが腕を掴んで引き寄せた。
瓦礫が降ってきた理由は新たな穴にある。
巨大な黒いドラゴンの頭部だ。
瓦礫を咀嚼し、カルラがそこに居ない事を知ると、ゆっくりと口が離れていく。
そして、巨大な目がギョロギョロと獲物を探して蠢いていた。
「行くぞ……」
小声で呟き、松明で照らして先へと進む。
その足音を辿って、ドラゴンの爪が穴に差し込まれ、3人の後ろから次々と瓦礫へと変貌を遂げた。
爪に追い掛けられる形で必死の逃走をしていると、眼の前に行き止まりと奈落へと続くのではないかと言うほどの深淵が覗いていた。
「あわわわわ」
「もうダメだぁぁ」
カルラとジーニー背を抱えてマサトは深淵へと飛び込んだ。
「ダメかどうかは後で分かることだ!!」
頭上を超える爪の先がマサトの左肩を掠めた。
抉れる血肉。
苦痛に顔を歪めながらも、深淵のその先から目を背けなかった。
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