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「ありがとうございました」
その後、なんとか空腹であることを伝えられたたぬきは、赤八から食べ物を分けてもらっていました。
「気にしなくていい。そいつは、昨日食べたもんがおらの尻から出たもんだ」
「ええ!」
「嘘だ」
たぬきが慌てて口を前足で拭おうとしたのを見て、赤八は声をあげて笑いました。
「こりゃ傑作だ。たぬきが人間に騙されて慌てとる」
「なんでそんな嘘つくんですか、もう。……え、ホントに嘘ですよね?」
そう言って、恐る恐るではありましたが、たぬきは再びもそもそと食べ始めました。
「しっかし、不思議だ。おめえたちたぬきは皆喋れるもんなのか?」
たぬきは口の中のものを「んぐっ」と飲み込んでから答えました。
「他の里のことはわかりませんが、オイラ達の里の者は皆喋れます」
「里?」
「この先の山奥にオイラ達たぬきの里があって、皆そこで暮らしてました」
「ました?今はもうねえのか?」
赤八がそう訊ねると、たぬきは暗い顔で俯いてしまいました。
「……数日前のことです。オイラ達の里が狼の群れに見つかり、襲われてしまいました。皆散り散りに逃げ出し、オイラは休むことなくひたすら走ってなんとかここまで逃げることは出来たけど、全員が逃げ切れたかは……」
なるほど、それでたぬき一匹、腹も空かせて倒れていたわけか。赤八はたぬきの話を聞きながらそう思いました。
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