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先生は言った。わたしが彼を好きだということを知らないヒトは部内にいない、と。
つまり、ファミレスのあの席に着いた時点で彼はわたしの気持ちに気づいていたのだ。
彼は言った。わたしが彼と同じだと。
好きなヒトがいて、そのヒトの想いは自分に向いていなくて、その想いの先にいるヒトが自分に想いを向けている。そういう意味ならわたしは彼と同じだ。
だからこれは彼の仕返しなのだろう。好きなヒトの想いが自分に向かないという辛さを、好きなヒトの想いを独り占めするわたしに味わわせるという。
夕暮れの帰り道、斜めからも強く照りつける太陽がわたしの体表を熱し続けるので、わたしはこの世界で熱を持っているのはわたしだけなのではないかと錯覚するほど暑さを感じていた。
そんなことは錯覚でしかないと頭では分かっていたのだけれど、わたしにはそうとしか思えなかった。
足は家路に向かっていたが、わたしの想いは単純な図形の中をくるくると回り続けていた。
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