待つ

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夏の青空はどうしても、 好きになることができなかった 見つめているだけで焦燥感に駆られる。 何か大事なものを忘れたような気がして。 いくら考えても思い出すことが出来なくて。 何事も嫌になる。 視界に入ってくる1面の青を遮るように障子を閉める。しかし障子に青色の光が反射する。 それはどこへでもついて来たがるようで、 どうしても小さな不安感を拭えなかった。 誰もいない空間でため息をつく。 その音は1人の部屋に響くことも無く消えた。 気づけば時計の秒針の音すらしなかった。 手元には何も残らなかった。 一人、焦っていた。 何かを待っていたはずだった。 何かになりたかったはずだった。 その何かすらも忘れた。 ただあるのは目の前の青く澄んだ空だった。
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