プロローグ

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 C―37Bが嘉手納を離陸して約二時間が経過していた。現在の高度は四万三千フィート、位置は静岡県伊豆半島の上空に達しており、機長席側の窓から綺麗な富士山が下方に見えている。  その時だった、機体後方で激しい爆発音が響いた。次の瞬間、機内の与圧が破れ操縦室(コックピット)主警報音(マスターワーニング)が鳴り響く。 「少佐、急減圧です!」  ダグのその声にデイブは計器上の警告表示を一瞥しながら、訓練通り酸素マスクを着用した。 「緊急降下(エマージェンシーデセント)だ!」  デイブはそう言うと推力(スラスト)レバーを手前に引き、エアブレーキを展開(デプロイ)すると、操縦桿を前に一杯押し込んだ。機体が毎分一万フィートの緊急降下に入る  約三分で高度一万フィートに達すると、デイブは機体を水平飛行に戻した。 「ダグ、客室(キャビン)を見て来てくれ。急減圧の原因を知りたい」  ダグが客室(キャビン)に入ると、そこには驚くべき光景が広がっていた。乗客の男は、シートベルトを着けたまま椅子の上で失神しており、彼の足元のアタッシュケースは内部から破裂している。そして客室(キャビン)の側面に直径十インチ程の穴が開いている。  ダグは男に駆け寄ると彼の肩を揺すった。直ぐに彼は意識を取り戻した。 「サー、何が起こったのですか?」  ダグのその問いに男は左右を見渡していたが、足元のアタッシュケースの残骸と客室(キャビン)の穴を見て目を見開いた。 「くそ! 『嘘つきモモ』に逃げられた!」  彼は穴の外に広がる相模湾の海面を見ながら肩を落としている。 「なんだ……? 『嘘つきモモ』って?」  ダグは想像できない言葉に首を傾げていた。
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