46人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
片想い
突然、目を覚ました。まだ心臓の鼓動が激しい。ベッドから起き上がり呼吸を整える。
「……夢……」
首を大きく振って、溜息を吐く。
時計を見ると午前七時を回った所だ。私はそのままシャワーを浴びた。汗を洗い流しながら、先程の夢を反芻して少しだけ”にやけて”しまう。
「……俺と付き合わないか……だって……」
そしてまた落ち込んでしまう。
だって、そんな嘘みたいな事が起きる訳がない……。これは私の片想いだから……。
シャワールームから出て自室に戻り高校の制服に着替える。そして階下に降りると台所で母が朝食の準備をしていた。
「お母さん、おはよう。お父さんは?」
台所から顔を上げ母がニッコリと笑った
「おはよう。奈津美。もう出かけたわよ。さあ、朝食の準備、今、出来たわ……」
私は大きく頷くとダイニングのテーブルに座って、朝食に箸を付けた。テレビから朝のニュースが流れて来る。
「昨日、午後三時頃、福岡市美術館で自爆テロが有りました。この爆発で犯人を含む九名が亡くなり、十八名が重軽傷です。この爆発は先月から大阪、名古屋、札幌で起こっている自爆テロと同様、SNS上で『嘘つき政府を倒せ』の名前で犯行声明が出ています」
テーブルに座った母がテレビに顔を向けた。
「怖いわね。早く犯人が捕まってくれれば良いけど……」
その母の呟きに私も頷いていた。
最初のコメントを投稿しよう!