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でも、もし発情期は1週間かかると思っていたら、葵くんの登校は早すぎるよね。 『心配してくれてありがとう。無事に終わっていま、まったりしていたところ。八木くんはお昼休み?』 直接発情期と言うのが恥ずかしくて濁しちゃったけど、伝わるよね? 『今お昼を済ませたところ。あのさ、急なんだけど来週の木曜日空いてる?』 突然のメッセージに驚いていたのに、まさかの予定の確認。 これは・・・どうしよう。 正直予定はないんだけど、ないって言っていいのかな? 『木曜日?実はまだ確定じゃない予定があって・・・その日がどうしたの?』 八木くんごめん。ちょっと嘘ついちゃった。 『ちょっと話したいことがあって、学校に来てもらいたかったんだけど、ダメかな?』 今までした事の無いメッセージのやり取りに、僕は少し困惑した。そして朝の葵くんの言葉を思い出す。 本当に八木くん、僕のこと・・・。 まさかね、と思いつつ、ふと見たカレンダーの日付で思い出す。 この日は確か・・・。 偶然空いてる日がこの日だったのか、それとも、この日を選んだのか・・・。 僕は直ぐに返事が出来なかった。それに、もし八木くんと会うなんて言ったら、葵くんはいい気がしないよね。 『予定を確認してもう一度連絡する、でいいかな?』 葵くんに言ってから決めよう。そう思ったのに、八木くんは引かなかった。 『どうしてもこの日がいいんだ。ダメかな?ダメでもいいよ。オレ待ってるから。放課後、あの桜の木の下で』 その強引な言葉に、やっぱりこの日だからだと確信した。それも、あの桜の木の下で・・・。 夕方帰ってきた葵くんに、八木くんからのメッセージのことを話すと、意外な答えが返ってきた。 「行って来てください。その間、湊は見てますから」 僕はその答えにびっくりした。もっと独占欲を表すと思ったから。 「・・・行っていいの?」 「むしろ行ってください。遅かれ早かれこの日が来るのなら、早い方がいいです」 湊を抱っこしながらそう言う葵くんの表情は穏やかで、無理している様子はなかった。 なおもじっと見ていると、葵くんは少し困ったように笑う。 「正直、行って欲しくはないです。でも八木先生とのことははっきりさせなくてはいけないし、もし今奏さんから迷いのようなものを感じていたら、行かせないと思います」 そこまで言って、葵くんは湊をラックに寝かせると僕のそばに座った。 「奏さんからは僕への思いしか感じません。そんな奏さんをオレは信じてます」 僕の目をじっと見つめたその揺るぎない言葉に、僕は葵くんに抱きついた。 「信じていいよ。僕が好きなのは葵くんだけ」 こんなに、こんなに愛しいのは葵くんだけだよ。 ぎゅっと腕に力を込めると、葵くんももっと強く返してくれた。 僕は葵くんだけのもの。 僕はそっと心の中で呟いた。きっと口にしなくても、葵くんには伝わるだろうから。 僕たちはそのまましばらく仲良くしてから、いつもの日常に戻った。
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