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朝食を済ませて湊の荷物のチェックをしていたら母が来た。志乃さんと貴士さんも一緒だ。 「ごめんね。来てもらっちゃって。仕事大丈夫?」 「無理してまでは来ないわよ。奏は大丈夫なの?湊のことは安心していいから、葵くんとの時間を楽しみなさい」 これから発情期という時に母にそう言われると、ちょっと恥ずかしい。 「うん」 僕は湊を母に渡すと、荷物は貴士さんが持ってくれた。 「志乃さん、母乳足りなかったらミルクにしてください。湊、ミルクも飲みますから」 いつ母乳が止まってもいいようにミルクも慣らしてあった。 「分かりました。湊くんをお預かりしてる間は私も泊まらせてもらってますから、安心してください」 「ごめんね。そこまでしてもらっちゃって」 なんだか冴木さん(志乃さんの旦那さん)に申し訳ない。貴士さんはもう独立してるからいいけど、冴木さん不便しないかな? 「あっちはあっちで家政婦を入れておりますし、久々の一人を楽しみにしていますわ」 志乃さんの家は実は家政婦さんがいる。志乃さんがうちの家政婦をしているからだ。 なんか変な感じだけど、冴木さんが志乃さんを見初めた時に志乃さんが仕事を辞めたくないと言う理由でお断りをしたらしいんだ。でも志乃さんを諦めきれなかった冴木さんは仕事を続けていいからと引き下がらず、こういう状態になったらしい。 志乃さん、実は働かなくてもいい人なんだよね。 母づてで知り合った冴木さんも実は社長さん。貴士さんは今は修行中で、行く行くは冴木さんの会社を継ぐらしい。 本当に無理させてないかな?と思ってたら、貴士さんが声をかけてくれた。 「本当に大丈夫だからそんな顔するな。むしろ楽しんでるんだから、感謝したいくらいだよ。湊はうちにとっても孫みたいなもんだし、久々に亜矢子さん(母)と女子会だって楽しみにしてたからな」 そう言われてみれば、志乃さんも湊に柔らかい眼差しを向けて母と楽しそうに話している。 本当に無理してなさそう。 「じゃあ、湊預かってくわね。迎えに来る時は連絡ちょうだい」 「うん。じゃあ湊、いってらっしゃい」 僕は母に抱っこされた湊のほっぺにちゅっとした。 葵くんも湊の髪を撫でて、僕たちは湊を見送った。 「湊・・・行っちゃった」 さみしい。 「橘の家なら心配ないし、あの分じゃものすごく甘やかされて帰ってきますよ」 そう言ってる葵くんからも少しさみしさが滲んでる。 同じ思いなのがうれしい。 僕はむぎゅうっと葵くんに抱きついた。 考えてみれば、こうやって2人で過ごすのはクリスマス以来だ。その時はもうお腹ぱんぱんであんまり動けなかったし、気も使った。 葵くんと再会した時も僕のお腹はもう結構大きくて、立ち上がったりするのが大変だったから、こうやってなんにもない状態で2人きりで過ごすのは初めてかもしれない。 前にも何度かあったけど、湊の授乳時間を気にしたりしてどこか落ち着かなかったからね。 でも今日は・・・。 僕たちは本格的な発情期に入る前のゆるゆるとした時間を、2人でくっついてまったり過ごした。
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