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そんなこんなで時間も遅くなったので、僕たちはそろそろ帰ることにした。
母には次の時もお願いする旨を伝え、志乃さんには心ばかりのお礼を渡した。本当は正規のお値段で、とお願いしたのに通常の実家のお仕事に加えられたベビーシッターのオプション分だけでいいと言われ、結局それ以上は受け取ってもらえなかった。
その場で封筒確認するんだもの。
さすが生まれる前からの付き合い。僕のことよく分かってらっしゃる・・・。
まあこれも、『甘えることも親(?)孝行』なのだろう。
家に着くと、すっかり寝てしまった湊をベビーベッドに寝かせ、僕たちは順番にお風呂に入った。
先に済ませた葵くんはベッドに入ってスマホをいじっていたけど、僕が来たのに気づいてそれを置くと、布団をそっと上げてくれた。僕はそこに潜り込む。
僕がぴったり葵くんにくっつくと、腕を回して抱っこしてくれた。僕は葵くんの首筋に鼻を埋める。
「・・・発情期終わったよね?」
その言葉に葵くんは僕のうなじの匂いを嗅ぐ。
「ええ。フェロモンは出てないです。いつもの奏さんの匂いです」
そう言いながらも、うなじをちゅくちゅく小さく吸う。
多分僕からエッチな匂いがしてるんだと思う。
さっきお風呂に浸かってたら、なんだか身体の芯が疼き始めて・・・。
発情期は終わってるのに、身体がおかしい。今日、秀兄に診てもらえばよかったかな・・・。
実家を出る時に授乳を済ませた湊は多分朝まで起きない。
だけど、葵くんは明日学校だし・・・。
そう思ってるのに、葵くんはうなじから耳へ唇を移動させると、そこでも小さなキスを繰り返す。
「奏さんが欲しいです」
耳に直接流し込まれる囁きに、僕の理性が崩壊する。
朝から掠れていた声が、僕の身体の芯を揺さぶる。
身体が熱い。
僕、どうなってるの?
発情期は頭がスパークしたようになって、何も考えられなくなるのに、今の僕の頭はちゃんと働いている。なのに、身体がどうしようもなく熱くなって、葵くんを欲する。
発情期とは違う発情に、僕は少し怖くなる。
「僕・・・おかしい・・・」
どんどん欲情していく身体は熱く、呼吸を乱していく。
怖い・・・。
そう思った時、葵くんの腕に力がこもった。
「奏さんがおかしいんじゃありません。オレが奏さんを欲してるんです。さっきお風呂の中で奏さんのことを考えてたから、きっとその残り香に煽られてるんです」
確かにお風呂場は葵くんの香りに満ちていた。
お風呂の順番はいつもと同じなのに、今日は実家で入れてもらった湊は入らなかった。
いつも湊と入ってた葵くんは今日一人だったから・・・。
お風呂の中で満ち溢れていた葵くんの噎せるような濃い香りが、もっと濃ゆくなって僕の鼻腔を刺激する。
「・・・いいですよね?」
その問いの返事を待たず、葵くんが唇を重ねてくる。
僕の頭は半分蕩けてそのまま口を開き、葵くんの舌を受け入れる。
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