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「・・・ん・・・ふ・・・ぁ」 再会してから何度キスしただろう。 葵くんは僕の感じるポイントを的確に刺激していく。時には優しく、時には激しく。 その緩急をつけた舌の動きに僕は翻弄され、いつ脱がされたのかも分からない。 素肌を滑るその手の、その指の1本1本が僕の身体に火をつけ、僕の身体に電気が走る。 「はぁ・・・ぁん」 下唇を甘く噛まれたその時、僕の身体はぴくりと跳ね、軽く達する。 「奏さん、かわいいです。もっと乱れて、もっとオレを欲して」 その言葉はすでにぐずぐずになった僕の頭には届かず、けれど掠れた声が直接僕の耳を刺激した。 「あぁ・・・ん・・・ん・・・ぅん・・・」 胸に降りた唇に先端を食まれ、イったばかりの前をゆるゆると扱かれると、僕の身体は小刻みに震えて今度は大きな快感の渦に飲まれそうになる。 今までも葵くんと身体を重ねてきた。その度に身体は感じ、何度も快感に飲み込まれてきたけど・・・。 だけど・・・だけどこんなんじゃなかった。 今までのなんて比べ物にならないくらいの快感に、僕は恐怖を覚えた。 怖い・・・。 僕はどうなってしまうの? 発情期とも違う。 あれはほとんど本能に突き動かされた行為だ。だから恐怖も何も無い。ただ相手を欲し、与えられることで心も身体も満たされる。 だけど、だけどこれは・・・。 まるで底のない沼のようだった。 足を取られて徐々に身体が沈んでいくように、僕は快感の渦に少しずつ飲み込まれていく。もがけばもがくほどその身は捉えられ、いつしか全身を覆い尽くす。 息もできないくらいの快感が僕の身体を飲み込み、気がつくと葵くんの昂りを後孔に穿たれ、その激しい抽挿に体を揺さぶられていた。 意識が半分飛んだ耳に、甲高い嬌声が響いてくる。それが自分の声だと分かるのにしばらく時間がかかった。 夜の寝室に響き渡るベッドの軋む音と腰を打ちつける乾いた音、そして交わった部分から出るいやらしい水音。さらに、高くはしたない嬌声・・・。 その音たちがまるでクレッシェンドのように徐々に大きくなり、そして・・・。 「ひっ・・・ぁ・・・あぁっ」 嬌声が一際高く上がり、全ての音が突然止む。 腰を深く穿ったまま、葵くんは小さく身震いして 身体を硬直させた。僕はより深く繋がろうと無意識に腰を浮かし、葵くんの背に足と腕を絡ませる。 時を止めたかのような静けさの後、葵くんの身体がどさりと僕の上に落ち、僕はそれを受け止めてギュッと抱きしめた。 今までにない激しい交わりに、僕の身体はまだ小刻みに震えている。 きっと、発情期の方が激しいはずなのに、意識のある今の方が僕には熱く激しいものに感じた。 まだ怖い。 身体の震えが止まらない。 僕がまるで別の何かになってしまったかのような気がした。 初めて発情期を迎えた時もそうだった。 湧き上がる性欲と終わりの見えない行為。 あの時も、自分が別の何かに変わってしまったような気がして怖かった。 僕は心に芽生えた小さな恐怖を和らげたくて、葵くんの首筋に顔を埋める。 葵くんの香り、もっと嗅ぎたい。 そう思って、まるで深呼吸するかのように鼻から吸ったその香りに、気がついた。 いつもと違う・・・? いや、いつもと同じ香りだ。大好きなグレープフルーツの香り。でも何かが違う。発情期の時のあのねっとりとしたものでは無い。でも、確かに何かが違う。 何が違うのだろう? とその時、葵くんが耳元で囁いた。 「大丈夫ですか?奏さん。オレ、ちょっと飛ばしすぎました」 その声にどきんとした。 朝から掠れていた声が、低いものに変わっていたのだ。 僕の身長を越した背と低くなった声、そしてわずかに変化した葵くんの香り・・・。 僕の胸がどきどきと高鳴り、顔が熱くなった。 葵くんのこの香り・・・。 いつもの爽やかなグレープフルーツの香り。けれど、その裏にかすかにほろ苦さを感じる。 ・・・大人になったんだ。
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