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今までは爽やかでみずみずしいフレッシュな香りだったのに、そこになんていうか、ただ爽やかなだけじゃない、深みのようなものが加わった。 発情期による成長で、香りまで変化したんだ。 胸のどきどきが止まらない。 どうしよう・・・。 葵くんが好きで、そばにいたくて、もっともっとくっつきたくて、ひとつになりたくて・・・。 今まで強くそう思っていたけど、そこには年上の余裕みたいなのがあった。なのに、もうそんな余裕はない。アルファの男として成熟した葵くんに、もっと支配されたい。もっと僕をその圧倒的なアルファの力で縛り、囲い、ねじ伏せて欲しい。 「どうしました?奏さん。大丈夫ですか?」 一向に顔を上げない僕に心配してくれてるけど、僕はそのまま顔を埋めていた。だって、こんな顔見せられない。きっと僕は今、完全なアルファになった葵くんの香りにあてられて恥ずかしい顔をしているだろうから。 もっと・・・もっと僕を支配して、そして葵くんのものだと、この身体に印をつけて・・・。 無意識に願ってしまうその想いが止まらない。 どうしよう。 そう思っていたら、葵くんが少し顔を離した。 「怒ってますか?オレが飛ばしちゃったから・・・」 その寂しさを含んだ声に僕は慌てて顔を上げた。 「違うよっ。逆」 見上げた僕の目の前に悲しげな葵くんの瞳があった。 「葵くんの香りが変わって、僕・・・」 支配されたい、なんて言ったら引かれちゃうかな・・・。 最後の言葉に躊躇っていると、葵くんの香りがぶあっと濃くなって、僕の中の葵くんがズクっと大きくなった。 そういえば、まだ挿入ったままだった・・・。 「奏さん、その顔マズイです。これ、抜いた方がいいですか?それとも・・・」 濃ゆい香りと中の熱さに、僕の息は上がっていく。 またあの渦が・・・。 「このまま・・・」 僕を支配して・・・。 最後は吐息になってしまった言葉は、けれどちゃんと伝わったらしく、葵くんは完全に復活した昂りをぐっと押し込んだ。 この渦は葵くんだ。 葵くんの僕への思いが、僕を絡め取り、従わせようとしている。 『もっと乱れて、もっとオレを欲して』 あの言葉が命令となって僕に響き、そして僕の身体はそれに従った。 得体の知れない渦の正体が分かれば、もう怖くない。 僕はそのまま、身を委ねた。 結局その後葵くんを2度受け止め、僕の中から出ていった時にはもう外は白んでいた。 あ、今日から学校・・・。 だけど・・・。 「・・・今日も休む?」 完全に動けなくなってしまった僕の代わりに色々と後処理をしてくれている葵くんに声をかけると、こちらはスッキリとした顔で『いいえ』と言った。 「奏さんは今日はこのまま休んでてください。オレは奏さんに元気をいっぱいもらったので学校に行ってきます」 そう言ってちょうど起きた湊を僕のところに置いてくれた。お腹が空いてる湊は服の上からでも吸い付きそうだったので、僕は急いで胸を開ける。するとぱくりと咥えて飲み始めた。 発情期で止まった母乳がまた出るか心配だったけど、湊が吸ったらまた出るようになって安心した。このまま母乳だけで行けそうだ。 横向きで授乳している後ろに、後処理を終えた葵くんが入ってきた。まだ支度をするには早い時間だから。 後ろから腰に腕を回し、うなじに顔を埋めた。 「どうしたの?」 「・・・すみません。止められませんでした」 なんだか少し落ち込んでる感じ。 「オレの中で、奏さんをもっと独占したいという欲求が強く起こって、だけどずっと我慢してたんです。けど、さっきメッセージをやり取りしてたら急に思い出して・・・」 メッセージ? そういえばお風呂から出た時ベッドでスマホをいじってた。 「圭吾に明日から登校することをメッセージしたんです。そしたら学校の話になって、八木先生の話になったんです」 八木くん? まあ、担任だからね。
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