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「先生、最近おかしいそうです。ぼうっとしてるし、ミスばかりしてたって。そのメッセージ見たら、奏さんはオレのものだって言う思いが強くなって、それで・・・」
今日ずっと我慢していた独占欲と合わさって、抗えないくらいの強い欲求になったと・・・。
独占欲は分かるけど、なんで八木くんからなの?
その疑問が顔に出たのか、葵くんはちょっと唸った。
「八木先生は奏さんが好きなんです」
その言葉に僕は思わず振り返った。その拍子に湊の口が離れてしまった。
「ごめん湊」
もう一度咥えさせてあげる。
「八木くんが僕を好き?そんなわけないよ」
僕は笑ってしまった。アルファって、自分の番の周りにいるアルファはみんな敵だと思ってるのかな?
「奏さんは分からなすぎなんです。八木先生は絶対に奏さんが好きなんです。だからオレが発情期欠席してたから、授業に身が入らなかったんですよ」
発情期欠席って・・・まあ、その間していることはアレなので・・・。だけど、そういう話は前から苦手そうだったし、きっと色々いらない想像してしまっただけじゃないかな?
「八木くんはともかく、僕は葵くんが好きだし、葵くんだけのものだよ。葵くん、香りも変わって、僕はもっと葵くんのものにして欲しいと思ってるから・・・だから大丈夫だよ」
心配性の番のためとはいえ、こんな本音を言うのはかなり恥ずかしい。
湊に授乳しながら僕、何言ってんだろう・・・。
きっと僕の顔、今真っ赤だ。
葵くんはまだ心配なのか、ぎゅうぎゅう抱きしめてくる。
ほら、また湊の口が離れちゃう。
「いいんです。そんな奏さんがオレは好きです」
なんか僕に言うと言うよりは自分に言い聞かせてるみたいな感じだ。こんな葵くんを引き剥がすわけにもいかず、僕は湊の方を引き寄せた。
「ところでさっきも言ってましたが、オレの匂い、変わりましたか?」
そうだね、自分の香りは分からないものね。
「変わったよ。なんて言うか、大人になった。今までの香りも僕を惹きつける香りだったけど、もう少し官能的で、支配されたくなる感じ。その香りで支配力を発揮されると、僕はおかしくなっちゃう。さっきみたいに」
さっきの僕、思い返すだけで顔が熱くなる。
発情期中の方がまだいい。我を忘れちゃうから。
「本当に変わったのならうれしいです。でも、奏さんもうれしいですか?前の方がいい、なんて思いませんか?」
さっきのちょっと暴走しちゃったのを気にしてるのかな?
恥ずかしかったけど、僕は気にしてないのに。
「僕もうれしいよ。どんどん大人になっていく葵くんにどきどきしっぱなし。もう少し僕の方がリードしていたかったけどね」
もう身体も心も葵くんの方が上になっちゃった。
「葵くんに全てを支配されると、僕はすごく幸せになるんだ。でも、そんなに急いで大きくならなくてもいいんだよ?」
発情期のこの3日で、葵くんの身体はすごいスピードで成長した。心は大丈夫だろうか?
けれどそんな心配をよそに、葵くんは僕の言葉にうれしそうだ。
「心配ないですよ。僕の匂いを嗅いでください。奏さんなら僕の心も分かるでしょ?」
そう言われて改めて香りを嗅ぐと、確かに不安げな感じもちぐはぐな感じもしない。安定してる。・・・ちょっと嫉妬っぽい感じが無くはないけど・・・。
でも不思議。本当に番の香りで相手の精神状態が何となくわかる。
でもあんまり覗いたら悪い気がする・・・。それを言ったら、別にいいんだって。
「奏さんに隠し事はありませんから、気になったらいつでも見てくれていいです」
ケロリとそう言うけど、覗き見してるみたいで嫌だな。あれみたい。彼氏のスマホを勝手に見ちゃうやつ。僕、あれも出来ない。でも葵くんはしたい方かな?
そう思って考える。
どうしよう。
他の人だったらすっごく嫌だけど、葵くんなら全然大丈夫だ。
これもオメガの性なのかな?
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