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そんな話をしていたら、湊が満足して口を離した。
「ごちそうさま。お腹いっぱいになった?」
僕は胸元を整えながら起き上がろうとしたら、葵くんに止められた。
「奏さんは寝ててください。オレやりますから」
そう言ってベッドを降りると湊を抱っこして、背中をとんとんした。でも最近、げっぷが出なくなってきた。今もけろりとした顔をしている。
「そろそろ湊もげっぷ卒業かな?」
もうすぐ4ヶ月だもんね。
早いな。すぐ大きくなっちゃう。
「ですね」
僕がちょっと湊の成長をさみしく思ってるのが分かって、葵くんが笑った。
「湊が大きくなるのはうれしいよ。だけど、このかわいい赤ちゃん時代が終わっちゃうのがちょっとさみしいだけ」
慌ててそう言う僕の頭を撫でてくれる。
「ちゃんと分かってますよ」
なんだか本当に、僕より大人になっちゃった。
こっちはさみしいけど、ちょっとうれしい。
葵くんは湊のおむつを替えると、再び抱っこした。
「そろそろ支度始めますね。後で何か食べるもの持ってきますから、奏さんはそのまま横になっててください」
そう言って葵くんは湊を連れてリビングへ行ってしまった。
そんなことを言われても僕がやりたかったけど、本当に腰が立たなかった。
ごめんね、葵くん。お願いします。
僕はお言葉に甘えて横にならせてもらった。
しばらくすると、葵くんがトレイに朝食を乗せて入って来た。
その出来栄えにびっくり。
ハムのサンドイッチにミニサラダ、そしてオレンジジュース。
「すごい、おいしそう」
サイドテーブルにトレイを置くと、葵くんが起き上がるのを手伝ってくれた。
ベッドの上で朝食なんて、どこぞの王様みたい。なんて思っていたら、あれ?と気づいた。
うちに今、こんな食材あったっけ?
「昨日志乃さんが持たせてくれたものに入ってました。他にもお弁当のおかずになりそうなものも入ってて、それでお弁当も作ったので、心配しなくて大丈夫ですよ」
・・・志乃さん、すごい。まさか、僕たちがこんな状態になることを予測していたのでは?!
と思って青くなったら、多分違いますよ、と葵くんが言った。
「ただ単に発情期明けで疲れている奏さんが休めるように、用意してくれたんだと思いますよ」
葵くんは笑ってそう言うけど、僕は志乃さんをよく知っている。
志乃さんはベータだけど、限りなくアルファに近いと僕は思っている。本当に志乃さんはなんでも出来るスーパー家政婦さんなのだ。
志乃さんならやりかねない。
僕は尊敬の意も込めてそう思った。
さすが志乃さん。恥ずかしいけど、感謝します。
僕は心の中で志乃さんにお礼を言った。
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