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あれから支度を終えた葵くんをベッドの中から見送って、僕はしばらく寝かせてもらった。
湊は寝室のベビーベッドの中でご機嫌で遊んでいる。
そろそろお昼も近くなり、いつまでもダラダラ過ごすのも良くないと思って起きることにした。と言っても腰が立たなくて超スローペース。ゆっくり着替えて、ゆっくり湊を抱っこして、ゆっくりリビングへ移動。
湊をリビングのマットの上に転がして、僕はそばのソファでひと休み。
もう、本当にどこのお年寄り?てくらい、腰が立たない。でも身体も心もすごく満ち足りていて、気がつくと顔が笑ってしまう。
こんなに幸せでいいのかな?
さっき、着替える時に見えた赤い跡。それを思うと、また僕の口元が緩んだ。
葵くんにいっぱい印付けてもらっちゃった。
どうしよう。口元のにまにまが止まらない。
なんて思っていたら、湊がいきなりぐりんと横向きになった。
寝返り?!
僕は慌ててスマホを手に取ってカメラを起動する。
録画開始。
でも、湊はすぐにまたころんと仰向けに戻ってしまった。
これ、昨日見せてもらった母の録画と同じだ。
もうちょっとなんだけどな。あと少し、あの腕を前に下ろしたらそのままうつ伏せに転がりそうなのに・・・。
見てる方はやきもきしちゃうけど、当の湊は横向きになってまた戻るのが楽しいらしく、何度もころんころんと転がって遊んでいる。
実家に預ける前は手足をばたつかせて遊んでたのに、たった3日離れていただけで、こんなにも動けるようになっちゃうなんて・・・。
やっぱりちょっとさみしいよ・・・なんて思いながらも、その姿があんまりにもかわいくて、しっかり動画を撮りました。
葵くんにも送ってあげよう。
今の時間だとちょうどお昼休みだしね。
そう思ってメッセージアプリを開いた途端、ピコンとメッセージの通知音がなった。
一瞬葵くんからかと思ったけど、違かった。
八木くん?
卒業以来ずっと無かったメッセージ。そのトーク画面に『身体大丈夫?』の文字が・・・。
もともとプライベートでメッセージをやり取りするような仲ではなかった。何かの時のためにIDを交換していただけで、ただそれだけだ。現に今のメッセージの前は、
『明日の先生の予定がキャンセルになったよ』
『ありがとう』
と言う学生時代のものだ。
別に親しくなかった訳ではなく、同じ研究室だったので毎日大学では同じ空間にいたし、食事も共にした。いわゆる『同じ釜の飯を食う』仲だった。けれど、不思議と大学の外では連絡を取ったりしなかった。
だから卒業して連絡が来なくても疑問に思わなかったし、こっちから取ることもなかったのに。
それが急に・・・。
『大丈夫だよ。どうして?』
返したその言葉にすぐに既読マークが付いた。
『篠原の復帰が早かったから、何かあったのかと思って』
間髪入れずに返ってくるメッセージ。
確かに通常の発情期はおよそ1週間。それに比べて、葵くんは4日しか休まなかった。
番を持ってなかったら早いと感じるよね。
でも、一般的な番同士の場合はおよそ5日間で、それは直接中に出さない場合であって、ちゃんと行えばもっと短くて済む。
だから僕たちも決して短かった訳じゃないんだけど・・・。
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