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戻ってきた葵くんに僕は両腕をあげてハグをねだる。すると葵くんはちゃんと意味を理解して僕をぎゅっとしてくれた。 「湊に嫉妬って・・・」 ぱいぱいに? 葵くんの首に腕を回して寄せた耳元に囁いた。最後は吐息だけで。するとは耳がすぐさま真っ赤になった。 「分かってます。湊にとってはとても必要で、当たり前のことだって。分かってるからずっと我慢してたんですけど、奏さん、オレが中にいるのに・・・」 最後はごにょごにょになってよく聞こえなかった。 葵くんが僕の中に・・・? 僕は先程の行為を思い出してあっと思った。 ダイニングで葵くんを受け入れた時、僕は湊を確認した。 「・・・僕が湊を見たから?」 その言葉にますます顔を赤らめ、葵くんはムギュっと力を込めて僕の肩に顔を隠した。 「親が子供の心配をするのは当たり前、なんですけど・・・」 葵くんは、らしくなく口ごもるとそのまま黙ってしまった。 それはつまり、行為の最中に他の人(湊)のことを考えたから嫉妬したってこと?それも、常々授乳する姿に色々思うところがあるもののそれを我慢していたのに・・・ということ? 赤ちゃんがお乳を飲むのは当たり前だし、床に転がしたままの幼子を心配をするのも親として当たり前なんだけど・・・。 そこを嫉妬されるとは・・・。 世間ではこういう時、どう思われるんだろう。 子供っぽい? 器が小さい? キモい? ウザい? あまりいい印象は与えないだろうけど、だけど僕はそんな葵くんがかわいいと思ってしまった。そして幸せだと。 湊は、そりゃとても大事。もう、かわいくてかわいくて仕方がない。何があっても、この子だけは命に変えても守る自信がある。でも、葵くんも大事。葵くんの剥き出しの独占欲と支配力を発揮されると、どうしようもない多幸感に包まれる。 どっちも大事。 でも、子供が1番、て言えないのは親として失格なのだろうか? 僕は少し悩んでしまった。それを受診した時に兄に言うと、笑い飛ばされてしまった。 「それは普通のことだよ。アルファの番に対する独占欲は半端ないからな。子どもに嫉妬は当たり前。そしてそれを幸せと感じるのもオメガなら当然だ。むしろそれが幸せじゃなかったら、アルファの縛りに精神がやられちゃうだろ?」 確かに。 普通だったら逃げたくなるかもしれない。でも僕はもっと縛られたい。・・・普通の人が聞いたら引かれそうだ。 「心配ないよ。健全なアルファとオメガの番の形だ」 だけど、普通はもう少し緩いらしい。兄は『さすが運命の番』とずっと笑っている。 そこまで言われるとちょっと恥ずかしい。なんだか世間のバカップルになった気分だ。 ちなみに僕からフェロモンは出ておらず、明日は無事に入学式に出られることになった。 よかった。
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