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桜も散り始めた4月の初め、僕たちは無事引越しを終えた。 感動の卒業式の後、僕たちはすぐにいい物件に巡り会え、こうして引越すことが出来た。 探してる時はなかなかないのに、たまたま出かけた先の何気なく入った不動産屋さんにその物件はあり、一目で気に入ってしまったのだ。 場所は都外だけど、それは川を渡っただけでほぼ東京。なのに都外なためお家賃も安い。交通の便もよく、最寄りの路線は僕の職場と葵くんの学校で使う路線であり、保育園も駅周辺にいくつもあった。 駅から20分と歩くけど、却って自然と公園が多くなるので湊を育てるにはとてもいい環境だ。 閑静な住宅地に建つ低層マンションの4階、それが僕たちの新居となった。 4階と言っても最上階だし、しかも角部屋。 なんでもまだ空いたばかりでハウスクリーニングも入っていない状態だったけど、僕たちの条件に合うからと特別に見せてくれたらしい。 なんかラッキーだったな。 日当たりのいいリビングにマットを敷いて、湊はそこに転がってご機嫌に手足を動かして遊んでいる。 3ヶ月になった湊はますます葵くんに似てきて、このままミニチュア葵くんはほぼ決定だ。 隣では葵くんが入学前に出された課題をやっている。 数学と国語の小冊子が1冊づつ。結構な量なのに、引越しの準備とかで全然出来てなかったのだ。 相変わらずすごい集中力。 春休みにかけてやるのを今日一日で終わっちゃいそう。 そんな葵くんに僕はミルクたっぷりのコーヒーを入れてあげた。 僕は温かい麦茶。 「ありがとうございます」 それを手にちょっと休憩。 「いよいよ来週入学式だね。それ終わりそう?」 内容は大したことないんだけど、量が多いんだよね。 「多分大丈夫です。奏さんも体調大丈夫ですか?」 「うん。今のところ大丈夫そう。でも念の為前日に秀兄に診てもらおうと思ってるんだ」 「予約取りました?」 「さっき見たら午後が空いてたからそこに入れた。葵くんも行く?」 「はい。湊見てますよ」 湊を生んで3ヶ月。そろそろ発情期が来てもおかしくなくなってきた。 個人差があるんだけど、早ければ3ヶ月くらいで来るらしく、入学式に当たらないかが心配。 葵くんは学校に番申請を出してるので僕が発情期に入ったら学校を休むことになっている。なので入学式に当たっちゃったら葵くんは入学式を欠席することになるんだけど・・・。 入学式は出たら?って言ったんだけど、絶対に僕の発情期は一緒に過ごすって聞かなくて・・・なので出来ればまだ来ないで欲しい。 今なんの兆候もないし、来ない人は1年近く来ないって聞くし、念の為診てもらう感じなんだけど。 出産後の発情期は実はお医者さんでも予測がつかないらしい。こればかりは個人差があって、1度来てしまえばそこから計算して出せるんだけど、来るまでは分からないんだって。 だから僕の場合も前日にフェロモンが出ていないかをチェックしてもらうだけだ。 ここで出てたらアウトなんだよね。 出てないといいな。 「オレ的には別に入学式は重要じゃなので、もし発情期が来ても大丈夫ですよ」 葵くんはなんでもないように言うけど・・・。 「ダメだよ、人生の一大イベントなんだから。それに新入生代表でスピーチもあるし、急に休んだら学校も困るよ?」
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