キャベツと稲妻

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「小学校に通わせずに自分の子どもを虐待していたのは、あんたのところでしょう。まったくどこでどうなったか知らないけど噂ばっかひとり歩きしてすっごく迷惑していたんだから。でも、おかげで証拠ができたわね」  女がおもむろに携帯電話を取り出した。  二階から泣きじゃくる声が聴こえる。意識がゆっくりと戻ってくる。雷雨はまだ続いていた。  わたしは髪の毛からつま先まで雨に濡れて。  部屋の床を濡らして。  そして雷雨に混じってわたしを打つ声。 「……お母さん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……お母さんは何も悪くないんだ。ぼくが生まれてこなければ、お母さんはこんな風に怒ったりしなくてすんだのに……ごめんなさい……。……だからぶたないで……」  唇が震えて、何も言葉を紡ぐことができなかった。  雨と、絶望が全身を濡らしていく。やがて遠くから、パトカーのサイレンの音がゆっくりと近づいてくるのが聴こえた。  子どもはまだ、嗚咽を漏らしながら懺悔の言葉を紡ぎつづけている。                    
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