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年齢は小学校一年生くらいだろうか。髪の毛はぼさぼさで、お世辞にも健康状態がいいとはいえなかった。そんな――言い方は悪いかもしれないけれど――みすぼらしい男の子がわたしの孫だというファンタジーは、二十六歳独身女子にとっては受け入れがたい事実だった。
名前を尋ねると、これもまた躊躇いがちに「キャベツ」だと名乗った。母親の好きな野菜から名づけられたらしい。わたしもキャベツが好きだから、きっとわたしの娘もキャベツが好きなんだろう、と思った。そこはすんなりと受け入れることができた。
その所為もあってか、どうしてだか警察に連れていくこともできず三日が経っていた。
「洗いものはぼくがします」
キャベツが率先して台所に立つ。
近所のスーパーで慌てて買ってきた子ども用のシャツとパンツから伸びる手足は骨が浮き出ている。この子は一体どんな育て方をされてきたんだろうか、未来の日本の栄養状態は芳しくないものなのだろうか。勝手な想像が頭をよぎる。考えを振り払いたくて立ち上がった。
「わたしはお風呂の準備をしてくるね」
「はい」
丁寧な子だな、と思う。少なくともわたしが彼くらいの年頃にはあんな風に大人に対してしっかりとした受け答えはできなかった。浴槽を洗いながら、台所に立つキャベツの後ろ姿をちらりと見遣る。
何もかも謎に包まれたキャベツのいちばん謎である部分は、決して裸を見せない、ということだった。第二次性徴の時期には程遠いだろうに、頑なに入浴や着替えの手伝いを拒むのだ。別にそういう趣味はないからいいのだけど。彼がもう少し落ち着いたら、やはり、警察に連れていくべき? 最近はずっとそのことを考えている。
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