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「そいつは、ほっといていいから…必要なんだろ?鍵。」
「はい。」
同僚を見る目が、明らかに俺と違いイラッとしたのを必死に隠した。
「なんか、怒っています?」
横を歩いていた彼女に顔を覗き込まれたが、冷静をよそおって見せた。
「は?あ…いいや。」
「え?ふふっ。」
俺との話との流れとは別に彼女が急に笑い、俺はすぐに振り返って同僚をにらみつけた。
「あいつは無視しろ…。」
なんて言ったところで、俺より顔のいいコイツのほうが…。
「はい。」
「え?」
はい…そういわれるとは思わず、俺の前に立つ彼女を見つめてしまった。
「ふふっ。森本先生って…面白いですね。」
「なんか…うれしくないな。」
「そうですか?」
「あいつよりはかっこいいとは、さすがにお世辞でも言えんだろ?」
「ふふっ。」
「いやいや…傷つくわ、」
「すいません。」
「ふっ、冗談だよ。」
「ひどい。」
「だな…ほい、鍵。」
彼女が広げた手の上に鍵を乗せた。
「ありがとうございます。」
一瞬、彼女の手に触れ…俺の中の何かが動き出した。
「ちゃんと、返しに来ますよ。」
「当たり前だ。」
「ふふっ。」
彼女の笑顔に魅せられそうになり、俺はすぐに背を向けた。
そんな日々が…俺を混乱させていった。
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