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その後 ──
映画製作会社と契約し、響さんのピアノ曲「flowering」はエンディングロールで流れることになった。
その映画のお披露目の試写会があって、私たちは、東京にあるミニシアターに来ていた。
別に出演しているわけでもないのに、ドキドキしている。
響さんのピアノ曲がお披露目されるんだと思っただけで、感無量で始まる前からじわっと涙ぐんでしまっている。
製作会社と配給会社からの挨拶があり、本編が始まる。甘酸っぱい青春映画で懐かしい香りがした。
そして、エンドロールが流れ、「flowering」が流れる。
なぜか私はここで号泣してしまった。
この曲が生まれるその前のことから、うまれてからのことも、色々と思い出していた。
私にとっては、響さんのピアノ音楽の才能の花開くきっかけになったこの曲の思いは、一際大きいものだったのだ。
毎週、淡々と練習を重ね、日々音楽と向き合ってきた結果がこんな形で見られてすごく幸せな気分だった。
映画が終わり、泣いてひどい顔になったあたしを見て、
「そんなに泣いて、どうするの?」
と笑いながら響さんに言われた。
「今日は、通過点なんだからね。これからもっとすごい世界を見せてあげるから、これからもしっかり見てて。ちっとやそっとじゃ倒れたりしないから」
と言われて、ぎゅっと抱きしめられた。
私は、この才能はこわしたりしない。ずっと大切に育てていこうと誓った。
END
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