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最初の予兆はちょっとしたことだった。
良くない評価が続けざまにつけられていたので、アレっと思っていたけど、そんな気をとめていなかった。
曲的にマイナーな感じだし、ちょっとさみしい感じにも聴こえるから。好き嫌いは分かれる曲なのかもなあと思っていたくらいだった。
そんなある日、コメント欄にこの曲の評価を延々と書かれていた。いくつか怖い言葉で書かれているのもあった。罵り言葉を使ったコメントはサイト側のAIでコメントが削除される仕組みだったので削除されていたけど、削除されたのをみて、都合の悪いのは削除しているとか書かれたりもした。
1人の人がアカウントを取っ替え引っ替え、書き込みして煽ると、他の人も便乗して投稿しはじめて、とうとう、動画のコメント欄が炎上し始めていた。
こちらが反応したり、注意したりしたら、余計に炎上が広がると思って黙っていたけど、私はすでに怖くてしょうがなかった。
パソコンの画面を見つめながら、泣きそうになっていた私に、響さんが
「もう、潮時だね、データ全部削除して、アカウントも削除した方がいいね」
とぽつんと言った。
こんな風に、撤退してしまうなんて思いもしてなかった。
私はどうすることもできず、ただ画面を見つめてデータが削除されていくのを見ているしかなかった。
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