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「それじゃあ、僕は部屋に戻るよ。どうぞごゆっくり」
「ありがとう。いただきます」
良い香りの煎茶と煎餅を出してくれた幸人君は、そそくさとリビングを後にした。
今はリビングにある小上がりの和室に上がらせてもらっていて、私と隼瀬は向かい合って座っている。
「…で?とりあえず黙って聞いてるから」
私はこくりと頷き、深呼吸してから口を開いた。
「まずは、今日駅で会った人の話から…」
「そこから話すのか?」
「最初に聞いてもらいたくて」
隼瀬は少し固まったが、すぐに「そうか」と言って胡座をかきなおした。
「慎也っていうんだけどね。幼稚園から中学校まで一緒だった幼馴染で…お母さん同士が仲良いから、習い事も一緒で」
私は、機械的に当時の記憶を思い起こしていく。
「放課後遊んだりもしてたから仲良かったんだけど、中学三年のちょうどこの時期…だったかな」
隼瀬は静かに話を聞いてくれていて、煎餅を片手にこちらを見ている。
鮮明にあの時の場面がフラッシュバックしてくるが、必死に感情を圧し殺す。
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