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明らかに無理をした微笑みを浮かべて、花結は湯気が出なくなったお茶を飲んでいる。
駅であれだけ動揺していたのにも納得がいった。
わざわざ傷をえぐるような質問はしたくない。
ただ、聞きたいことは一つある。
「俺にそんな話して、よかったのか?」
「まあ確かに、矛盾してるよね…」と苦笑しながら、こちらに目を合わせてきた。
「隼瀬には核心をつかれたし、助けてもらったし…言いふらしたりしないって分かるもん。
別にまた助けて欲しいから、とかじゃないから。今まで通りの気楽な関係で接してもらえれば」
こいつは本気で言っているんだろうか?
ここまで話しておいて、今まで通りが良いとは。
「…とりあえず事情は理解した」
「うん。ごめんね、つまらない話を長々と」
「別につまんなくねえ。それより次だ」
急須に入ったお茶を湯呑みに勢いよく注ぎ、再び話を聞く態勢を整えた。
「ああ、えっと…那々木さんのことだよね?」
「そうだ。俺が行かなかった打ち合わせの日から色々起きてるな。話せ」
「そんな気にすること…?」と言いつつ、花結は順を追って話し始めた。
打ち合わせの日、帰りに送ってもらったのに加えて、ひとつの花の苗を貰ったこと。
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