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「あれ、もう帰っちゃうんですか?」
帰り支度の物音に気づいてか、幸人君が二階から降りてきてくれる。
気づけば二時間くらい隼瀬と話をしていて、時刻は六時半を回っていた。隼瀬のご両親も、じきに帰ってくるだろう。
「うん。休みの日にお邪魔しました。幸人君、お茶ありがとう」
「どういたしまして。また遊びに来て、今度は僕ともお話してくださいね」
嬉しくてこくこくと私が頷いていると、隼瀬は「お前は余計な話するから駄目だ」と言って、幸人君の頭をペチリとはたいた。
「家まで送るか?」
「大丈夫!まだ時間早いし。今日は色々とありがとう、隼瀬。また来週ね」
「ああ。気をつけろよ」
私は、自宅までのんびりと散歩しながら帰ることにした。
「…濃い一日だったなあ」
あれこれと起きすぎて、頭の中が大忙しだった。
慎也と会った時、息ができなくなって動けなかった。
でも隼瀬が、強引ではあったが守ってくれて、その温かさに心が満たされた。
そしていつの間にやら、隼瀬と私の噂も誤解が解けていた。帰り際、一年生とその話をしてる時に、周囲からかなりの視線を感じたが。
そういえば隼瀬は、矢吹と何を話していたんだろう。
私には関係のない話なんだろうか。
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