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送別会が終わって、翌週の水曜日。
本来ならサークルの日だが、送別会は年納めも兼ねているので、年明けまでしばらく休みだ。
私は今、大学内のミーティングスペースで、お弁当を食べている。
今日は、いつも昼食を一緒に食べている同じ学部の友人と都合が合わず、ひとり窓際のカウンター席に座ってくつろいでいた。
「あっ、花結!送別会ぶりね。今日はひとり?」
背後から名前を呼ばれたので振り返ると、矢吹がこちらに小走りで向かって来ている。
「矢吹、お疲れ様!友達、用事あるみたいで…」
「そっか…さっき渡り廊下のところで隼瀬君とすれ違ったけど」
「一緒に食べれば良かったのに」と、不思議そうな顔つきで矢吹は言った。
「えっ、なんで…?」
あまり冗談っぽくない言い方に、思わず私は焦ってしまった。
矢吹はそんな私を見て、フフフと笑いを浮かべる。
「隼瀬と一緒にお弁当は食べたことないよ…あ、そういえば矢吹。送別会の時、隼瀬を同じ席に呼んでたよね。何の話してたの?」
「ああ、あんた達が色々誤解されてた件について言及してたのよ」
まさかそんな話題で盛り上がっていたとは。隼瀬、そりゃブッフェも楽しめなかったろうに。
そして一年生の誤解が解けていたのは、そういうことだったのか。
「そ、そうなんだ…じゃあ隼瀬、ちゃんと弁明してくれたんだね。知らなかった」
「当たり前じゃない。元はと言えばアイツの、花結に対しての距離感がバグったのが事の発端だし」
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