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「…そんなおかしかった?」
矢吹は呆れるように笑みを浮かべて「あんたは相手に合わせすぎ。鈍感」と突き刺さる意見をもらった。
「それにしても…隼瀬君、ほんとに大胆だねえ」
「え。大胆って、何の話?」
私がそう聞くと、矢吹は目を丸くして「あれ、もしかして花結は知らないの?」と言った。
「何の話してたのかは、全く聞かされてないけど…」
「…そうなんだ。それなら、私から言うことじゃないね」
意味深な発言だ。隼瀬に直接教えてもらわなきゃいけない話とは、何なのだろうか。
「ごめん忘れて!全然ネガティブな内容ではないから心配しないで。
あと、クリスマスの集まり忘れてないよね?もう店予約してあるから、あとで連絡する!」
私の頭をポンポンと叩いて、矢吹は次の講義があるからと立ち去っていった。
とりあえず、隼瀬に会ったら聞いてみるか。
私はテーブルに頬杖をついて、窓越しの中庭をのんびりと眺めた。
次にある講義は約二時間後のため、当分暇だ。
私はこの時間を使って、ある事をしようか悩んでいる。
「……迷惑かな。どうしよう」
手に持ったスマホには連絡先の一覧が表示されており、タップすれば電話が架けられる状態だ。
今日はお休みの日だから、いいだろうか。
きっと優しいあの人なら、怒らないかな。
私は深く深呼吸をした後、指を画面に押し当てた。
周囲の騒音が一気に聞こえなくなり、呼び出し音だけが頭に響いていく。
3コール目、呼び出し音はプツリと切れて、向こう側の物音が聞こえた。
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