6人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
『もしもし、那々木です』
思ったよりも早い応答に、私は思わず慌ててしまった。
「あっ…もしもし櫟です!えーと、お休みの日にすみません。今、お時間大丈夫ですか?」
私の慌てように対してなのか、電話の向こうで微かに笑い声が聞こえた。
『うん、大丈夫ですよ。花結さんが電話くれるの初めてだね。どうかしたの?』
「あの、大した用事とかはなかったんですけど…先日は本当にありがとうございました。花束、凄く喜ばれました」
『ほんと?嬉しいな。お役に立ててよかった…』
電話越しでも、いつもの那々木さんだと分かる。
私は意を決して、聞いてみることにした。
「それと…あの日、話の途中だったんじゃないかと思って」
『……あー、それは…』
那々木さんは明らかに戸惑い、躊躇っている。私は黙り込んで、話してくれるのを待った。
『…本当にごめんね。急に触ろうとしてきて驚いたでしょ…自分でも何がしたかったのか、よく分からないんだ』
隼瀬君が止めてくれてよかった、と彼は笑いながら付け加えた。
「…あの、那々木さん、」
『ん?』
「クリスマスの日も、お店はやっていますか?」
『うん。普段通り営業するよ。あいにく独り身なもので、予定もないから…』
那々木さんは少し寂しそうな声つきで、ぼそぼそと言った。
最初のコメントを投稿しよう!