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実際に、ダニーは所有していた売春宿へ足を運び、彼が身に受けた凄惨な扱いを聞き出していた。
アンドロイドならば、人に出来ないようなことをしてもいいと思うのだろうか。
人工皮膚を焼かれ、関節を痛められ、それでも人類に対して抵抗を許されていないアンドロイドは、客たちのなすがままになっていたという。
物珍しさも過ぎた頃、初期の『スリーピングビューティー』を好む客が安価に買い取り、しばらくその所有下にあったらしい。
さらに幾度かの転売を経て、スクラップ寸前の状態で、他のアンドロイド二体と共に彼は売りに出された。
捨て値で買い取った古物商の倉庫に、そうして彼はたどり着いたのだ。
盗まれた『スリーピングビューティー』を発見するまでに、十五年もの年月が経っていた。
それだけの時間、ろくなメンテナンスも受けることも出来ず、彼は人の残虐な欲望を身に浴びながら過ごしてきたのだ。
震える手で、ダニーは身を抱く。
「もう大丈夫だよ、『スリーピングビューティー』。僕が君の主になる」
呟きに、アンドロイドが微かに身を引こうとした。
「いけません、ダニエル様。私はスクラップ同然のアンドロイドです。どうかもうこの身は廃棄して下さい」
初めて会った時と変わらない、優しい声でアンドロイドが告げる。
「私に触れては、あなたが汚れます」
そう、言われてきたのだろうか。
お前が触ると汚れると、以前の主人たちから――
「君はきれいだよ『スリーピングビューティー』」
心からの想いを、ダニーは告げた。
「初めて会った時と何一つ変わっていない。君の瞳を見た時にどれだけ僕が感動したか、伝えたことがあったかな?」
わずかな抗いをみせる人工の体を、ダニーは大切に腕に包む。
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