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アンドロイドには心がないと人は言う。
彼らは決められたプログラムによって動いているだけなのだと。
そうなのかもしれない。
けれど、物にも心が宿ることはあるのだ。
自分が彼を求め、彼も自分を想い続けてくれていた。
恐らくそれを、奇跡と呼ぶのだろう。
「君ともう一度巡り合えて心から嬉しい。どれだけこの時を夢見たか……よくぞ耐え抜いてくれたね」
たとえ部品になっていても、地の底まで駆けずり回って彼をもう一度見つけ出すつもりだった。
彼さえいてくれたら、それ以上に望むものなど何もなかった。
「家に戻ろう『スリーピングビューティー』。僕たちの家に。そこでずっと一緒に暮らそう」
想いが溢れ、言葉となって滴り落ちる。
「君は、僕のアンドロイドだ」
呟いた後、顔を離して彼を見つめる。
微笑んだ『スリーピングビューティー』の瞳から、涙がこぼれ落ちる。
それは毒を全て洗い流したような、透明に澄んだ雫だった。
涙の浮かぶ、晴れやかなターコイズの瞳は――
この世で一番美しい青の色をしていた。
ダニエルが恋してやまない、愛しい青。
微笑みを与えると、再び腕に抱き締める。
「愛しているよ、『スリーピングビューティー』」
言葉の代わりに、そっとダニエルに回された腕に、力が籠った。
(The End)
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