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人工生命体――アンドロイドが人類の生活に浸透してから、もう半世紀が経とうとしていた。
アルソード・レイス博士が開発した画期的な人工生命体は、それまでの常識を覆すものだった。
人類よりもなお人類らしく、人々を幸福にするためだけに作り出されたアンドロイドの最初の一体は、『アルボラーダ』と名付けられた。『アルボラーダ』はスペインのアストゥリア地方に伝わる「朝の歌」を意味している。その名のごとく、『アルボラーダ』は人工生命体産業の夜明けを招く存在だった。
アルソード・レイス博士がアンドロイドの最初の一体を世に送り出してから、五十二年。
人類はアンドロイドの恩恵をふんだんに受け、もうその存在なしには日常生活が成り立たないまでに依存していた。
一人に一台、とはいかないまでも、ほぼ一家に一つはアンドロイドが備えられ、あらゆる面でのサポートを担っている。
毎年、有名なファクトリーから新商品が発表され、人々はボーナスでどの商品を買うかを家族で相談する、という風景が日常だ。
新しい製品が次々と開発される中、当然ながら新機種に立場を譲ったアンドロイドたちは、中古品として払い下げられていく。
以前の持ち主の記憶を削除したうえで、経年劣化と部品の消耗を加味した値段でアンドロイドたちは叩き売られる。
新商品の購入と抱き合わせで、下取りに出されるアンドロイドも多数あった。
人工生命体がなくてはならないものとなった今、中古品を取り扱う業者も当然のように生まれてくる。
市場は年々大きくなり、中には、レアなタイプのアンドロイドにプレミアム価格がつくことさえあった。
中古アンドロイド販売は今や一つの職業として成り立つまでに成長している。
ダニー・ヘンドリクスも、アンドロイド古物商許可証を持つ中古バイヤーの一人だった。
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