Sleeping Beauty -愛しい青の物語-

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 毎年新しく販売されるアンドロイドの情報まで網羅しているシステムは、完璧なダニーの査定を支えている重要な道具でもあった。彼がどうやってその情報を更新しているのか、ライバル社たちは知りたがったが、ダニーは決して明かさなかった。     今もその解析システムは、ダニーの足元にある。  淀んだ空気が充満する倉庫街の半地下で、ダニーは中古のアンドロイドの買い付けを行っている最中だったのだ。    商談相手は、正式なアンドロイド古物商の許可証を持っているのかすら怪しい、人を食ったような笑い方をする男だった。  モレク・ミズラヒと彼は名乗った。  時代物の指輪を両の指にこれ見よがしにつけ、ダニーへ眼差しを向けている。  食えない男だ。  心の内に呟いてから、ダニーは口を開いた。   「私が得た情報では、あなたの倉庫には『スリーピングビューティー型』のアンドロイドが保管されている、とあったのですが、さて。ガセだったのでしょうか。もし本物なら手に入れたいと考えているのですが」     いつものように、ダニーは中古アンドロイドの買い付けを行っているはずだった。  けれど、どこかしら冷静さを欠いていたのかもしれない。  自己紹介を終えて早々、商談を進めようとするダニーに、有利に運ぶ隙があると踏んだのだろう。  古物商の男はこちらをじらしてきた。   「『スリーピングビューティー型』はずいぶん昔に作られたものですが、意外と人気がありましてね」  にやりと男が野卑な笑いを浮かべた。 「なにせ実用性がありますのでね。人に言えない趣味を持つ者にとっては、格好のアンドロイドなのですよ」    ダニーが何のために『スリーピングビューティー型』のアンドロイドを欲しがっているかを、見透かしたような声で男が呟く。   「案外、ヘンドリクスさんも、そちらの趣味がおありなのですかな?」    
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