Sleeping Beauty -愛しい青の物語-

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 アンドロイドは、人類の幸福に貢献するという名目の元に研究、開発が進められてきた。  もちろん、医療現場や介護施設、危険を伴う作業などで人類よりはるかに優れた身体能力を持つアンドロイドは重宝されている。  だが、もう一つ。  性産業でも、アンドロイドの需要は高まってきていたのだ。  ある意味、やむを得ない事業が業界にはあった。  どうしても性病などのリスクが伴う分野だ。  性の奉仕を主とする仕事が、部品を毎回消毒洗浄した上で、従順で優れた技術を持つアンドロイドに置換されるのに、時間はそれほどかからなかった。  見目麗しく作られた一部のアンドロイドは、成人向けと銘打って販売され、アンドロイド市場の稼ぎ頭にまで成長していた。    『スリーピングビューティー型』と呼ばれるアンドロイドシリーズも、性産業タイプに属していた。女性型の需要が多い中で『スリーピングビューティー型』は男性型に特化して開発されたアンドロイドで、一部のコアな愛好家を擁している。  残念ながら、開発者はすでに死亡しているが、シリーズは高名なファクトリーが委託を受け開発を続けている。  いまだに人気の商品だ。  特に開発者自らが基本設計を引いた『初期型スリーピングビューティー』は名作との呼び名も高く、残数も少ないとあって価格の高騰を招いていた。    ダニーの今回の目的も、初期型のスリーピングビューティーだった。  長く調査を続けた結果、ようやく存在が確認できた一体だ。  どうしても購入する必要がある。  下卑た笑みを浮かべてこちらをじらしてくる店主に、苛立ちと嫌悪がつのってくる。   「私の趣味はひとまず置いておいて」  ダニーは営業用に鍛え上げた笑みを、武装するかのように顔に張り付かせた。 「先ほどからうかがっているお話では、ここに『スリーピングビューティー型』のアンドロイドがあるかどうかは、断言できないということになるのでしょうか?」  
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