Sleeping Beauty -愛しい青の物語-

7/18
前へ
/18ページ
次へ
     店主が目を細めた。  ダニーは視線を逸らさなかった。  ここで見せろと言われると考えているのか、店主の目の中に剣呑な光が宿る。  ダニーはさらりと続けた。   「そうでなければ、アンドロイドの販売をなさるはずがない。許可証もなしに中古のアンドロイドを販売目的で倉庫に保管していたとしたら、警察の立ち入り調査が入ったときには、大変不利な状況に追い込まれます。知人から預かって置いてあったという常套句は警察には通じませんよ。彼らは全てお見通しです」    さっさと倉庫からアンドロイドを出しやがれ、という気持ちを込めて笑みを深める。   「今、全てのアンドロイドを私に売って下さるというのなら、万事解決です。私は口が堅いので、どこから手に入れたか決して他にはもらしません。  それに、外にアンドロイド運搬用のコンテナを用意しておりますので、この場から速やかに運び出すことができます。  それに」  ふふっとダニーは柔らかく目を細めた。 「私以上に高い買取価格を示す業者は、いないと思いますよ」    胸元に入れていた小さなチップを操作し、空間に光るメモを広げる。  ダニーはサラサラと金額を書き込んだ。    家が一軒悠々と買えるほどの金額を、店主に示す。   「この額でいかがですか」    ごくりと店主の喉が動いた。   「あ……」  店主はさらに金額を吊り上げる方法を必死に考えている顔をしていた。 「実は、先約が入っていて、それで――」  恐らくハッタリだと解っていたが、ダニーはあっさりと金額を記したメモを消した。  相手に考える余裕を与えず行動に移ることも、時には有効な戦法だった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

164人が本棚に入れています
本棚に追加