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「その金額の十分の一でいい! アンドロイドを現金で三体まとめて買い取ってくれるのなら、この場で契約書を交わそう」
本当は、厄介払いをしたがっているのは目に見えていた。
アンドロイド古物商許可証を持たないことなど、お見通しだ。
警察に踏み込ませて、アンドロイドを押収してもらうことも考えたが、出来れば穏便に済ませたかったのだ。
ようやく策が当たって、安堵の息が漏れそうになる。
ふうっと、思わせぶりに吐息をついて、ダニーは再び振り向いた。
「よろしいでしょう。アンドロイドを三体、私たちの商会でお引き取り致します。当然、出所は秘匿することをお約束いたしましょう」
言い放ってから、店主の顔を見つめる。
彼は小さくうなずいた。
笑いがこぼれそうになる表情をあえて引き締め、ダニーは言葉を続けた。
「では、早速契約書の取り交わしに参りましょうか、ミズラヒさん。
アンドロイド三体の金額。十分の一でとご提示いただけるのでしたら、この場でお支払いいたします。もちろん、お望みの通り現金で」
* * *
高級車が買えるほどの現金と引き換えに、アンドロイド三体を無事に自分の所有にしたあと、ようやくダニーは店主に連れられて、地下二階にある店主の倉庫へと向かった。
向かう廊下もまた蒸し暑かった。
その上に暗い。
不快な状況も、ダニーは全く気にならなかった。
足元がふわふわとするような感覚に襲われる。
事前の情報では、間違えていないはずだ。
どんな代償を払ってでも手に入れたかった『スリーピングビューティー型』のアンドロイドがこの先には待っている。
落ち着け、と自分に言い聞かせる。
「ヘンドリクスさん。ここですよ。この倉庫にアンドロイド三体が保管してあります」
上機嫌で店主がダニーに告げる。
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